トーレンスTD124のキャビネット
オーディオは難しい。納めて一週間、恩師はやはり不満が出てきた様である。聞いていてだんだんつまらなくなって来たと連絡があった。
良い音を鳴らしている方がいると聞けば、色々な所に伺い聞いて来ている怪物の様な方である、一発で決まらない事は分かっていた。
若い頃は何でもご自分で作り頑張っていたのだが、70歳になり体力がなくなり、目も悪くなり根気も失せて、私にご依頼されたのである、ありがたい私を信用していただき感謝である。
さてどうしよう。ターンテーブルは、名機トーレンスTD124である。完成されたターンテーブルである。こちらの経験と腕が試される、とてもシビアな機種なのだ。
しかも恩師のアナログプレーヤーである。日本全国を聞き回った方である。その評価が間違えてる筈がない。ならば敵は機械であり音である。
音を形にするのは本当に難しい。何処がどうなってつまらない音になってるのか見えないからである。音を見方につけるのも敵に回すのもこちらの経験と腕次第である。私は世間と同じにする気はない。
トーレンス124は完成されている…ならば一度裸にしてしまおう、そう感じた。本体の音を掴むのが先決と思ったのである。
124には本体の底に四ヶ所、止まりネジが切ってあり、そこにM5でピッチ8㎜のボルトが留まっている。そこにチークか黒檀の足を作って留めてみよう。
さてその方法だが。ただチークや黒檀に穴をあけ加工して刺さっているだけでは駄目だ。
その木に、本体に付いているボルトにあったM5の8㎜ピッチのねじ込み式の鬼目ナットを仕込み、ボルトに留めてみよう。
見た目はスケルトンになるが、ほぼ本体の音が分かる筈である、と、考えた。今回もまた上手く行かなくても構わないと恩師は語っている。
心強いがこちらはプロである。しかし独りは怖い、その恐怖と闘った。相手もそれなりに期待していると思う。なんとかして差し上げたい。
上手くいくだろうか。自分でも思う、この自信はどこから来るのだろうか。
装着するのは明日である。