原点を忘れるな
私は昭和34年西暦1959年の生まれです、今年60歳になりました、オーディオは何年経験を積んだのかそんな事は全く関係ない、簡単に話せば音楽や音を分かっているかいないかただそれだけだと思います、しかしみなさん誰も分かっていない、私はそう思います。
元々はただ音楽を聴く為に揃えたオーディオ、中学生になりまだ音の事など全く分からずお小遣いで買ったレコードを飽きもせず何年も大切に電蓄で聴いていたものでした、私が子供の頃レコードはとても貴重な存在でした、しかしここが一番大切なところです。
私は小学生の頃トランペットが大好きだった、かっこいいと思い小さな街の楽器屋さんに行ってはショーケースに入っていたトランペットを一日中見ていても飽きなかった、神秘的でキラキラしていて美しいそう思った。
そして中学生になり街にはキャロルが流れ一気にエレキが流行りバンドブームになった、私も通信販売でギターとアンプがセットになったものが確か12800円で売られていた、それを両親に買ってもらった、毎日磨いて大切に弾いていた。
しかし一年もするとロックバンドブームは去り井上陽水を始めとするフォークソングブームになり、私は(断絶)を買って聴いていた、今でも所有している、当時のレコードなので音源は古いが、今は信じられない程上手く鳴っています。
そして学校にもあまり行かなくなりいつも一人で遊んでいた、勉強も全くしなくなった、所謂フォークソング狂いの馬鹿息子と言われいつしかトランペットの存在は薄れ押し入れの中に入っていた。
その頃自転車が好きになり、誰の力も借りず一人で何処までも行ける気がしたからだった。
当然勉強も出来ず地元で入れる高校もない私は、東京の偏差値の低い不良高校へ進学した、相変わらず勉強は出来る筈もないが、何故だか学年で一番勉強の出来ない私が大学の試験に合格してしまった。
合格した大学は二部だったので昼間はアルバイトをして、夜講義を受けていた、そのアルバイト先でみんなと新宿のディスコへ行った、そしてJBL4560BKと出会った、そして思った『神秘的でフォルムはかっこいいけど酷い音だな』そう思った。
そしてそのアルバイト先で一歳上の方がJBL4343を所有している事を知り、聴かせていただき感動した、私はその時ジミ・ヘンドリックスのレコードを持参し聴かせていただいた『こんな音がレコードから鳴るのか?』そう思った。
そしてこう思った『こんな音は同じフェンダーストラドキャスター&マーシャルを所有していても俺には絶対に弾けない』そう思い、一気にギターの熱は醒めた。
そしてこう思った『弾けないなら私は再生側になりたい、遂にやりたい事に出会った』と、ここから私の勘違いオーディオが始まった。
何の根拠もなかったが鳴らせる自信だけはあった、給料は総てレコードやオーディオに消えていった、ある時急に気が付いた、元々は単純に買ったレコードを少しでも良いと思える音で音楽を聴きたかった事に、オーディオに引っぱられ音ばかり聴いてる。
そんな状態だったのでいくらお金をかけてもJBL4560BKは上手く鳴らなかった、そしてかけるレコードをとても選ぶシステムになっている事に気が付いた、今
思い出しても酷い音でした。
35歳の頃こう思った『オーディオにお金をかけるのは少し控えよう、鳴らないのでなく私が鳴らせないのでは?』そう思った。
そこから私のオーディオの方向が変化してきて、色々なヒントが自分の経験してきた中から生まれるようになったのです、つまりこれがいつも書いてきた分かっていない自分に気付いた瞬間でした。
そして『オーディオは使ってる機材のスペックも確かに必要だが総てではない』と思うようになったのです、分かっていない事を分かるまでに大変な努力をしました。
そして総ての接点を磨いたり一つ一つ丁寧に妥協なく作業を行いました、先ずは以前住んでいた賃貸マンションの分電盤のところから、接点は錆だらけで繋がっていたであろう古いケーブルをカットして被膜をむいて見ると中の元線はまっ黒、コンパウンドで何度も磨いてピカピカに、そしてアルコールを使い酸化したコンパウンドの脂を何度も脱脂して、一旦拭き取り再度薄くチタンオイルを塗り手で直に触らないように丁寧に配線をやり直しました。
入口から出口まで徹底的にこの作業を繰り返しました、総てを終えると一ヶ月経っていました、話す迄もなく総てを終えて聴いてみると、静かで綺麗な本当の意味で力強い音になっていました。
そしてピンケーブルスピーカーケーブル、アースの取り回し機材の清掃、過去にいい加減にやって来た事総てをやり直しました。
書いていて思います『結局誰も分かっていない』そう思います、分かっていない事に気付くこれは大切な事ですが、人によって気付く時が違います、一生気付かず終わる方が殆どです、理由は簡単です面倒くさいと思うからではないでしょうか?でも気付かないよりはましです。
それらが積もりに積もってどこからどのように手を付けていいのか分からないレベルになっているのです、あまり考えず先ずは入口から少しずつ最後まで丁寧にコツコツやってみる事です。
私はそれを総て行ってから過去から気になっていた所を妥協なく丁寧に改善してきたのです、つまり基本がなっていない所に時代が進みスペックが足りないからと勝手に思い込み、新たな機材を購入して繋いでも分かる筈がないのです、無駄遣い以外のなにものでもないことに早く気付く事です。
オーディオは素晴らしく鳴って当たり前です、しかしとても難しいのです、原点に返ってみて雑念のなかった何にも分かっていなかったあの頃へ戻ってみる事です。
人は過去を忘れる事が出来ません、しかし私は捨てました、そうする事で新たな道がひらけたのは事実です、いらないセオリー、それが伸びしろを駄目にしています。
鳴らないのをオーディオシステムのせいにしてはいけません、そのようなシステムにしてしまったのは他ならぬ貴方です。
つまりこう言う事、汚い職場でまともな仕事が出来ますか?そこに優れた機械を入れたとしてまともな仕事が出来ると思いますか?確かに何かをしたら音は変化します、しかし本当の答えが出るでしょうか?本当の答えはもっと遠い基本的な所にあります、どうせ何も分かっていないなら、分かっていない自分に気付いて下さい、なのでオーディオは難しいのです。
オーディオは貴方が思っているほど簡単ではありません、原点に返ってみて下さい、途中経過の中で沢山のミスをしています、そして極論、自分は自分、人は人なのです。