誰も鳴らせなかった音を鳴らしたかった
私は何をやってもやるにも人と違う世界を持ちたかった、早く言えばかなりの変わり者だと思います、しかし本物(真実)を追求してきたので本質は間違えてはいないと思います。
二十八歳の頃までは優れた機材を使う事が良い音を鳴らすことに繋がると思い疑いもしませんでした、それも確かに一理あると思います、しかし違うのです。
色々名機と言われる機材を購入して使ってみました、しかし土台がしっかりしていないとある程度までしか鳴らない事に気が付いたのです。
若い頃はこう思っていました『圧倒的に重量のある機材は、圧倒的に重量のある音を再生出来る』と。
しかしやがて気付きます、重量のあるものは音が軽く音の抜けがよく静かで穏やかな音になる事に、特にパワーアンプです、片チャンネル1000ワットを超えるものは駆動力があり素晴らしい音になると思いきや私の意に反し、穏やかな音でした。
つまり高級なもの程ソフトに忠実な音になるのです、しかしそれを使いこなすにはこちらもそれ相応のお膳立てをし下地を整えておかなければならないのです。
購入し届いた時に新しいものに取り換える前に『とりあえず今までの設置場所にそのまま設置して比べてみよう』これが一番いけないのです、今の音が駄目だから買い換えた訳です、その駄目な設置場所に設置してとりあえずスペックの違いを聴いてみようと思うのでしょうが、あまり差のないことに気付き『その内にしっかりさせよう』と楽な方を選択してしまうのです。
人は天の邪鬼です、いつの間にかそんな事はすっかり忘れて『お金をかけてもそんなに差はなかった』こう記憶がすり替わってしまうのです。
私は若いときこう思いました『この家(昔の実家)が駄目なのだ、屋内配線も細くブレーカーの容量も小さくすぐに落ちてしまう、私のような財力のない輩が使う代物ではない』と。
そして数年後『アンプは出力の差ではない、音の質が大切なのだ』それはワットやダンピングファクターで表す事の出来ない小さなアンプ(出力10ワット位)の回路と部品の素晴らしさを聴いたからだった。
そしてこのように思われてる方もいらっしゃる『これだけお金をかけたのだから良くなったのだろう、たいして変わらないのはまだ自分に聴き分ける能力がないからだ』と。
ではいつになったら聴き分ける事が出来るのでしょうか?そんな話はありません、つまり機材を買い換えるにあたり何処をどのようにしたいのか明確な基準がないままに、何となく良さそうだからと高級品に買い換えてしまうからです。
今住んでる家は注文建築で自分の予算の中でビルダーに目一杯わがままを聞いてもらい出来上がった戸建てです、そしてその中で家族に相談しながら許される限り自由に音質改善が出来ました。
そして思いました『やはり若いとき気付いた事は間違えていなかった…結局究極の機材や部屋など何処にもない、究極の音はこちらが鳴らすのだ、機材は単なる素材でしかないのだ』そう確信したのです。
もっと言えば揃えた機材を正常に動作されていないと、色々集め揃えた機材総ての正常な判断が出来なくなり、その結果ポリシーのない変てこなシステムが出来上がってしまうと言う事になります。
家の作り、床や壁や天井、屋内配線やブレーカーを含めた電源周り、コンセントの数とその質、適度な防音、ケーブルとその取り回し、これらがしっかりしてはじめてスタートへたてる、しかし私はたまたま戸建てを所有出来たが、毎月支払ってる住宅ローンは昨今の木造アパートの毎月の家賃にも満たない。
オーディオの話から飛躍してしまいましたが、どうしても住居の事から語らないとオーディオの話と繋がりませんでした。
しかし戸建ては集合住宅では出来ない事が自分の責任に於いて出来るのでオーディオがやりやすいです、私はこのような環境で目一杯オーディオを追求しております。
なので私はオーディオルームが持てた、正に恵まれた環境である事も事実です、それでもオーディオはなかなか思ったように鳴ってはくれません、今でもまだまだではありますが努力しております、この家で誰にも鳴らせなかった音をいつか必ず鳴らしてみたいです。
それにしてもオーディオはなかなか上手く文章に出来ない事を痛感せざるを得ませんね。
それにしても昨今の木造戸建ては震災後しっかりしていて、冬は暖かく夏は涼しいです、そしてとても静かです。