悩ましい事
私はオーディオケーブルの作者です、注文が来たケーブルを作り販売しております、お客様の元へケーブルが届いたとのご連絡が来た時はほっと一安心します、しかし片方から音が出ない、さわると音が途切れたりする、との苦情がたまにあります、先ずこちらは作り直す事も視野に入れ何故なのかを真剣に考えます、人が作ったものに絶対はないからです。
しかし私は出来上がったケーブルの抵抗値やショートしていないかを厳密に測り実際に抜き差ししたり必ず数時間様々なジャンルの音楽を聴いてから納得して発送しているのです。
私の作っているのはピンケーブルとスピーカーケーブルが主で、オーディオケーブルとしては一番一般的なものだと思います。
新たに届いたケーブルはまだ端子も固く自由さが少なく相手の端子となかなか馴染んでくれないもので、そこがとても悩ましいのです。
ピンケーブルはただ刺さってるだけ、お客様の端子が度重なる抜き差しで多少広がっていたり錆びていたり、お客様のプラスの端子と形状が微妙に合わずプラスが反繋がりで僅かに浮いていたり、とにかく絶妙に繋がっているだけなのです、スピーカーケーブルはお客様が差し込み過ぎて被膜のところでかしめた為導通していなかったり様々です。
端子は別々な金属どうしを半田で留め、ただ刺さってるだけなので眼に見えない所で色々な事が起こりますが、だいたい二~三日で端子どうしも落ち着き、ケーブル自体もなりたい形になります、そもそもこれがオーディオケーブルなのです。
しかしこちらは困ります、お金をもらってる以上やはり責任が生じるからです、私の経験上作り直したとして、今度は別のチャンネルが同じように導通しないと言う事もあります、そして抜き差しを繰り返す為磁化する事も考えられます。
それをなくす為に接触不良の極少ないスイッチクラフトの端子を使っているのですが、それでも安易に抜き差しの出来る端子はたまに接触不良が起こるのです。
とにかく後から繋ぐ物に絶対はないのです、そこがケーブルを作っていて一番悩ましい事です。
ただ繋げはいいと言うものではなく、使う側も少し色々工夫して使いこなしてみてほしいと思います。しかしそのような事を知るのも良き経験となるでしょう。