JBLとアルテックはオリジナルボックスに限る
総て知らないで話している訳ではない。歳の割には個人的に真実を知りたくて散々オーディオに関わって来た方だと思う。
オーディオショップに勤務していたおかげで、たくさんの本物と出会いもあった。そして、確かに優れたボックスを製造できる会社も存在した。
しかし、ことJBL4560やアルテックA-7のボックスだけは、古いオリジナルに敵わない。
作り手からすると、手間とコストがかかる割には、オリジナルと比べ、良い音にならず作りたくない。と聞いた事が幾度もある。
同じに作ろうと思っても、分からない所が多々あり、弾んだ音がどうしても作れないのだと言う。
それでもオリジナルとは少し違うけどと、堂々と作って販売してる所もある。売れれば良い、そんな簡単なものではないだろう、そう思う。オリジナルを使うべきだ。
昔の事になるが、4㎝厚の米松の木で、4560と全く同じ形で同じ容積のボックスを特注した事があった。板が厚いのでとても重く、その分外形はかなり大きくなった。
しかし、そのガッチリした作りの優れたボックスから鳴った音の、なんというつまらない寂しい音であったかである。作っていただいた方に落ち度はない、こちらが、先方が嫌がるのを無理を言って作っていただいたのだから。
私は自分の馬鹿さ加減にガッカリした事を忘れない。でも未だに訳の分からない特注ボックスを、注文する人が多い。オリジナルボックスとは、決まった指定されたユニットを最大限上手く鳴らす為にあるのだ。同じには作れる筈がない。
特注したボックスは確かにスペックは素晴らしかった。余計な音はなんにもない。作りが強固な為なのか低音もオリジナルとは比較にならない程下までのびた。しかしその他はメリットが何にもない。
つまりこうだ。スピーカーボックスとは、バイオリンやピアノの胴体の様なものなのだと思う。
音の元を鳴らすのは確かにユニットだ、しかし130Aや515Cが完成した時代、今とは違いユニットそのものが楽器の様な正確な鳴り方になるのを、メーカーはまだ求めていなかったのだと思う。
楽器は弦だけの基音で鳴っている訳ではない。ボディーがあって初めて共鳴してその音は作られている。それと似たようなものだと思う。
でも昔のメーカーが楽器の様にボックスを絶妙に共鳴させ、鳴らそうとした音は、突き詰めれば最終的には、現代の音と狙いは同じなのだと思う。
現に今になってもなお、未だにユニットだけで低音を鳴らせるユニットは存在しない。ただボックスと言うものが縦に長く小さく強固になり、エネルギーロスなくリスナーに伝える方向に少し変わって来ただけ。
話しは特注ボックスに戻ります。とにかく躍動感や音楽の美味しい所が総て削げて、旨味がない。まるで鶏の笹身に何の味もつけずにただ焼いて食べたような、旨味のない感じと話せばご理解いただけるのだろうか…
倍音も極端に少ない為か、ドライバーの音と全く繋がらないのだ。それではと、ツィーターを繋げてみるとキンキンして聞けたものではなかった。特に女性ボーカルである。
同じような経験をされた方も、今その様な状況の方もたくさんいらっしゃるかと思います。
その時は、特注しお金をかけたのだからと、認めたくないだけ。私も現に当時はそうだった。
一ヶ月、半年、一年と聞いてると鳴らないのが分かってくると思う。オリジナルの素晴らしさを。
作りがいかに優れていても関係ないお話なのだ。ボックスを開けて中を見ると、アメリカの製品は実に作り方が雑である。しかし音が良ければそれで良いと思う。
もう一つ、JBLとアルテックにはたくさんの名機と言われているユニットが存在する様に思える。しかし実は、そんなにたくさんの組み合わせパターンはないのだ。
そのユニット選びをみなさんは大体間違えている。130AとLE-85で800Hzクロス、375で500Hzクロス。もしくは2220Aや2205Aと2420で800Hzクロス、2441で500Hzクロスと言う様にである。他にはあまり存在しない。
実はそんなに名機はないのです。この組み合わせから外れるから独特な鳴り方になり、用途が違うためが故に、家庭のスピーカーとして、上手くユニット同士が繋がらないのです。
そしてそこに更にツィーターが繋がります。気持ちは分かるのですが。先ず、ツィーターを繋がずにLE-85や2420から伸びやかな高域を鳴らせなければ、ツィーターを繋げても上手く繋がらない筈です。
JBLにはツィーターに075や077と言う名機があります。しかし肝心なドライバーがしっかり鳴ってない所にツィーターを繋げても徒労に終わります。
JBL独特のパチャパチャシーシーした、よく存在する潰れた音質になってしまいます。
それはツィーター個体の音でなく、ドライバーとの繋がりが問題なのです。JBLのツィーターは良くないんではなく上手く鳴らすのが難しいが正解ではないでしょうか?
075や077と上手くバランス出来て初めて、もっと優れた他のメーカーのツィーター探しに行けるのです。
殆どの方は、オリジナルネットワークで上手く鳴らせもしないのに、マルチに走ってしまいます。
そうではありません。経年変化で既に駄目になったネットワークと全く同じ部品定数で同じ回路で、新しい部品でLCネットワークを作ってみる事からスタートしなければなりません。
ツィーターは低音を増やす為に繋げるのです。これが以外と理解されていません。
古いネットワークはどこが駄目になっていたか理解出来るようになるし、新しい部品で作ったネットワークは、部品定数が正しいので、オリジナルネットワークが、本当は何をやりたかったのかが少しは分かる筈です。
ただ自作したとは言え、その優れた音に舞い上がってはいけません。単なるメーカーと同じものを新たに作ったに過ぎないからです。
そしてメーカーのオリジナルネットワークが本当はいかに優れていたか理解し、認めなくてはなりません。
まだ部品が足りなく、それを上手く使いこなしていた時代のセンスは、やはりただ事ではありません。
JBLのオリジナルネットワークはあまり良くない?とんでもない!定数は少しずれていますが。とてもユニットの特性とボックスを合わせて、実に上手く作られています。今は時が経ち部品が劣化しただけのお話です。それをオリジナルとする事こそ既にナンセンスではないでしょうか。
色々なユニットが存在するのは、他のメーカーと違い、プロ用として現場によって色々な使い分け、つまりチョイスがあるからで、一般の方は安易に知らないユニットに手を出すべきではありません。それは先人達が後世の為に伝えてきています。
LE-8Tで低音や高音をキッパリ諦め、定位を楽しむか。130AとLE-85と2345ホーンを組み合わせ、800~2000Hzでクロスさせ、それで上手く鳴ったら、075を追加する。多分上手く繋がれば低音が分厚く鳴る筈です。
これが上手く鳴らす一番の早道だと私は思う。当然ボックスは4560BK USAのオリジナルが合うのは間違いないが。これがまた非常に難しい。
とにかくJBL4560BKの完成度の高さは他のボックスの群を抜いていると思う。
個人的に何個の4560BKを使ったのだろう…同じJBLの新しいのや、他で作った(山水等)4560は全く別物。弾んだ躍動感がなく、音が湿っぽく暗い。更に他のメーカーのボックスとなれば、購入し聞いた時の落胆は話すまでもありません。
鳴らすのは難しいと言わざるを得ないが。JBLやアルテックはオリジナルボックスに限ります。
バスレフポートからスピーカーケーブルを入れたり、裏板を分厚くしたり、後から板を貼ってボックスの鳴くのを止めたりしては絶対にいけない。完成品なので。そのままが良い。
JBLとアルテックは、絶対にオリジナルボックスを探してでも、例え高価でも購入して使おう。ある程度のお金と、スペースがなければオーディオは出来ないのです。