完成したシステムの試聴にお客様が来られた。
まだ八割程の完成だが、ほぼ終わりステップアップしたと思う。しかし自分だけの判断では心配である。井の中の蛙にはなりたくない。
ここは一つ、耳のこえたズパリ結果をいただけるお客様にご試聴願う他はない。そう思った。
一週間前に連絡をとり、試聴をお願いした。はじめはまだ評価出来ないと話された。そうアナログは、なかなか良い音にならないのである。私とお客様はお互いにアナログ派である。
何枚もレコードを聞いた後、針圧をほんの少し下げる事を提案された、一発では決まらなかったが、何度目かに決まった。しかしオーディオテクニカのAT-1005Ⅱは、感度の良いトーンアームである。お客様も驚かれていた。
ずっと聞かれていて、高域の消えていく所の余韻(自然減衰)が不自然で上手く出ていないと話された。それが針圧調整で見事解消された。ありがたい、独りではやはりここまでは気付かない。
そこからまた、いったん聞いたマドンナの宝石に戻り、ズービンメータの惑星も再生してみた。驚く程上手く鳴った。はじめて二本のスピーカーが完全に消えたと話された。
しかし、ノイズカットトランスの威力はもう疑う余地がない、入れたら我が家もこんな音になるかな?との質問に困ってしまった。
私がここまで鳴らすのにどれだけ努力したか、私は悩んだが、正直、ここまで鳴らすのは簡単でないことをお伝えした。
お客様の部屋の電源は100Vである。アンプは同じCROWNである。USA仕様なので、100Vから117Vへの昇圧低磁束ノイズカットトランスになるが、ノイズカットトランスはかなり効果があると思う。
少し前の、私と同じ道を辿る事をしっかりお伝えした。一旦は、普通の塩化ビニールの一次側のケーブルと二次側は赤黒スピーカーケーブルになることも。
先に書いたとおり物事には順序がある、同じに進んでいかないと、真価が分からないのである。
結局プリとパワーに一台ずつ東栄トランスを注文する事になった。
アナログはオーケー。次はCDである。私はあえて昔の日本映画戦国自衛隊のサントラ盤を四曲かけた、Jポップがちゃんと鳴ることを確認していただきたかったからである。
スクリーンに雨が降る、戦国自衛隊のテーマ、ジョー山中のララバイオブユー等である。あり得ない位上手く鳴った。
そして、試聴が終わり鳥達の声(森のなかで)を再生した。スピーカーが鳴っているとは思えないと話された。CDもオーケーである、遂に異次元オーディオの入り口に入ったのを確認した。
異次元オーディオの鳴り方とは、皆さんが思っている音の想像を遥かに越えた鳴り方である。高価な現代のハイエンドが鳴らす更に先のそこからかなり先のお話である。
まだそこまで鳴らした人はそうはいないのではないだろうか。私は仕事柄あちこちに行き、様々な凄いと言われるオーディオシステムを2000軒は聞いてきた。
しかしどこも雑誌で紹介される程の鳴り方はしていなかった。普通の鳴り方で、単にシステムが馬鹿でかく、値段が高価なだけだった。ならば私が真実を鳴らそう、そう思って努力してきた。
結果良かった。紆余曲折あったが、私の数々の実験やその積み重ねの順序は、間違えていなかった事になる。
さて肝心な今回の試聴結果だが、もうまるで次元が違うと話された。スピーカーから鳴ってる音とは到底思えない。これ以上の音ってあるのだろか?と聞かれた。即座に、「ある」と私は答えた。
今までで最高の音とお誉めの言葉をいただいた。これから私も大変だ。良い音になったからと、このままここに止まっている訳にもいかないし、また絹巻き電源ケーブルや、スピーカーケーブルをたくさん作らなければならない。しかし大切なお客様の為である。同じ様な鳴り方にして差し上げたい。
最後に別れ際、今日の音は凄かったねと言われた。
最高の誉め言葉である。
しかし、オーディオは終わる事はない。
ウエスタンスピリッツは、まだまだ続く、更にこの先へ行く為に。しかしもうお手本はない。