アナログを極める2
このお話は少し前の内容である、実際は更に更に、先へ進んでいる。
写真の、最後から二枚は対策を講じる前のキャビネットの様子である、作ってから一年じっくり聞いてきた。そこから今回の作業は始まった。
アナログは、まだ改善の余地ありである、さあこれが今まで大きく気になっていた最後のところである。オーディオはやはりアナログを追求したい。
今までのキャビネットは写真の様に、去年製作した赤タモの25㎝厚の集積材一枚だった。しかし、作った時は充分と思えた。ヤマハGT750オリジナルキャビネットは、板が安価なMDFボードで厚さが1㎝位だったからである。
しかし、前回自分で作った完成品を見て、どこか頼りなく感じていた、まだ総体積も剛性も足りない気がした。前回MCヘッドアンプからプリまで、新たなリッツ線を繋げて分かった。新たなケーブルでエネルギーロスが格段に減った為だった。
床からの影響はなくなったが、今度はスピーカーがまともに動作する様になった。音楽を聞いてる時は感じないが、歪みがないので実際は、かなり強烈な音なのだろう。レコードに針を乗せた時にターンテーブル自体がわずかにプーンと鳴った。
とうとうこんなレベルになってしまった。普通ならば絶対にあり得ない、機材やラック、スピーカーの下に板を敷くまでは全くなかった現象なのである。
オーディオはレベルが上がって来るたびに次なる粗が出てくる。それを一つ一つ正確に見極め理解して正しく改善してゆかなければならない。
オーディオ機材自体は、みなさん性能の差を気にしてるようだが、実はたいした差はないのである。ならばこちらは、オーディオ機材がまともに動作する様にお膳立てをしてあげる必要がある。
これが、機材の能力だけではどうにもならない問題なのである。総てはメーカーが過去に甘く作った尻拭いの様なものである。今現在もメーカー製品は振動対策が何にも改善されていない。キャビネットを製造してる方も考えていない。同じ間違いが、ただ繰り返されてるだけである。
ウエスタンスピリッツのハウリングマージンは、一枚板の状態でも、普段聞く最大のボリュームから3目盛り上にとれてる。それでもやはり今のままでは、エネルギーロスを起こしていると思う。お断りしておくがかなりの音量である。
ここがしっかりすればウエスタンスピリッツのアナログは、更にかなりのレベルに達する筈である。
今回は、今ターンテーブルが乗っている赤タモの集積材に、3㎝角のチークの棒を四面三本ずつ木工ボンドで張り合わせ板を作り、総て木工ボンドで留めた。
そして底板は、やはり赤タモの集積材を真鍮のネジで十ヶ所留めた。
底板はメンテナンスやケーブルを交換する時に外す必要があるからである。本来は木工ボンドで張り合わせたいところだが、仕方がなかった。
そしてトーンアームの下に3㎝厚のチーク材を更に大きく一枚張り合わせた、トーンアームの下は厚さが3㎝追加され5.5㎝の厚さになった。それも側面の板と接触させて留めているため、効果の程は厚さが増しただけでなく、かなりのものである。叩いて聞いた感じは、チークの音が七割で赤タモの集積材の音が三割といった感じである。凄く良さそうな気がした。
以前の一枚板のキャビネットの下は12㎝プラスになり、合計で14.5㎝の厚さになった。デザインは、まるで囲碁の台の様になってしまったが、これによる音質改善効果のない筈がない。叩いても嫌らしくポコポコ響く事はない。
出来上がったキャビネットの下に、チークのキューブか、青黒檀を特殊な形に加工したものを三個敷く(三点支持)のであるが、今回は今まで使ってきた青黒檀をチョイスしてみた。
そしてどうせやるなら徹底的にと思い、ターンテーブルの電源を本体から外し、外に距離をおいて完全に隔離して分厚い板に付属のネジで留めて設置した。
16時間経ち、木工ボンドは実用強度になり、キャビネットはかなりの重量になった。叩いてみるとなんだか良さげ、さて音質効果のほどは。
これが本当のアナログの音なのだ、キャビネットを補強する前の音など、最早ただのおもちゃの様なものだったと感じた。
この時はまだ、ずっと作業していたので、カートリッヂはまだ目覚めておらず、MCヘッドアンプもプリもバワーアンプも覚醒していない。なのになんて力強い品の良い素敵な音なのだろうか。
まだ木工ボンドも完全に乾いていないだろう。木工ボンドは、乾くまでに個人的にはとりあえず十日間かかると思っている。そして完全硬化は一ヶ月位だと思う。
新たに作っておいた長さ50㎝のリッツ線シールドケーブルも、写真の様に、端末をトーンアームの内部配線(リッツ線)と半田で留めた所も、電源を半田で留めた所も、まだ半田も音もなじんでない。まだ半分の融合もしてはいない。
とりあえず三日間(72時間)経った音が楽しみである。更に落ち着き、穏やかでクリアーな音になる筈である。
鳴らして40分、音が穏やかになってきた。それにしても低音が深く沈み、スケールが桁外れに違う。柔らかいが芯があり、一切こもってはいないのである。正に音楽が変わった。
幾多のマニアが色んなクレージーな事をやって来たが、極論総て横一列並び程度で、どれも大した事はない。結局は無駄である。ただ高級品をつかっているだけ、どれも振動対策の的を得ていない、個人的に今そう思う。私もかつてはそうだった。
やはり場数を踏まないと分からない事がある。キャビネットは他人任せにしてはいけない、センスを持って自分で作るしかない様である。
何故ならば世間のオーディオは笑える程鳴っていない、結局は人に発注してるからである。つまり、それが答えであると、いい加減気付いてほしい。
ウエスタンスピリッツは、多分キャビネットも大成功だと思う。何日か後に木工ボンドが乾いて総てがしっかりするのが待ち遠しい。
完成したその夜に家内と聞いた。ドッシリとした穏やかで鮮やかな音がした。
キャビネットが重くなったから音がドッシリしたわけではない。ターンテーブルやトーンアーム、カートリッヂが各々、余計な振動から解き放たれ、まともに動作した為である。
鳴らしていると、馴染んでくるのか、音はどんどん静かになり、歪みが減って、のびのびしてくる。
次の日は、更に穏やかになり解像度が上がっていた。カウントベイシーのウォームブリーズを聞いた、やはり思ったより低いバスドラの低音が録音されていた。ドンッと鳴り、奥から前に出てきた、それが引き締まり太く強く前に出てきて、柔らかく鳴った。
ワーグナーのワルキューレは、日本の盤だが、圧巻だった。
そして実際に鳴らした時間が73時間に達した。もうこの音を文にする事は出来ないが、まだ重低音振動の影響は残っている。
アナログのエネルギーロスが減った反面、今度はハウリングマージンが減った、さてどう対処するべきだろうか。