アルツハイマー型認知症
私の母がそうなのです、少しお付き合い下さい、認知症とは恐ろしい病気です、家の中に認知症の方が一人いるだけで、家族みんながおかしくなってしまいます、母がおかしいと気付いたのは引っ越してきて直ぐの事ですが、私はなかなか認める事が出来ず二年目の事でした、親子が故に介護は熱くなりこちらも期待して壊れて行くのです、脳神経内科での認知症の検査で判明しました、脳も映像にハッキリ写っていました、つまりスカスカになってしまっていました。
しかし脳がスカスカになっているからと言っても個人差があり認知症でない方もいらっしゃるようです。
まずやることなすこと総てがちぐはぐになります、そして次第に会話が成り立たなくなります、しかし他人の前では取り繕う事が出来るため周りの人には意外と気付かれません、最近の事を忘れ昔の記憶は比較的鮮明これが認知症の特長です、そして次第に前後左右の人間関係がなくなり上下関係しか理解出来なくなります、この思考は多分自分が一番で自分より偉い人の言うことを聞いていたら間違いないと生きてきた母の根本的な考え方なのだと思います。
そして夏なのに靴下を三枚も履いていたり暑いのにコートを着て出かけるのです、季節や時間の感覚が完全にずれていました。
一番困るのは会話が成り立たない事です、会話とは沢山の単語が重なり成り立っているので、全く普通の話しが理解出来ないのです、総てが繋がらないのが認知症と言う事です、なので一人にしておけないのです。
若い頃の母は女優さんや歌手の名前を良く覚えていて感心したものです、そんな事は何にも覚えられなくなり、一日中テレビを観ているのですが『色々あるんだな』と一日中いうようになりました、色々あるとは全く理解出来ず眼からの情報が全くないことを意味します。
母の場合耳からの情報の方が頭に入ったようです、そして毎日買い物へ行き同じものばかり買ってきていました、例えばしょうゆ、トマト、半分にカットされたレタス、小松菜、等です。
ドリンクは熱中症になってはかわいそうなので我々夫婦が色々な種類を買ってきては冷蔵庫へ入れておきます、すると三十分も経たない内に全部(5~6本)少しずつ飲んであけてしまうのです。
しかもあいてるものは飲まないので次の日には炭酸も抜けて駄目になってしまい捨てていました、そんな事が頻繁にあるので買って来なくなりました。
そして母のいる1階の冷蔵庫はいつも空っぽにしてありました、かじったトマトや林檎等はラップに包んであり、ただとってあるだけで食べないのです、そのまま放置するため全部腐ってしまうのです。
母にとって冷蔵庫は魔法の腐らない箱だと思っていたのだと思います、では何故ラップに包むのか理解出来ません、普通の人なら一時間後に食べたりするのでラップに包んで冷蔵庫にしまいますよね、しかしそこが認知症の方の特長なのです。
そして便失禁が始まります、恥ずかしいのか隠してしまうのですが匂いで分かります、そんな事が重なり自宅介護の限界が来たのです、自宅介護は365日24時間です、いつ何が起きても不思議ではなくとても緊張します。
一日中同じ話しばかりしています、始めはいいのですが、聞いてるこちらも狂ってきます、認知症の方の介護は想像を絶します、誰だって自分の親を施設へなんか入れたくありません、しかしその日は確実にやって来ます、例外はないのです、寂しいですがそうする事が母の為なのだともっと早くに気付くべきでした。
母は今は何にも分からなくなってしまいましたが、老健でお世話になり穏やかに暮らしております。
我々夫婦は出来る限り母に会いに行ってます、何にも分からなくなっても何処かで私が息子なのだと分かっています、そんな母がたまらなく愛おしいです。
諦めないで、そして頑張らないで、必ず良き道は開けます、忘れてならないのは自分を生んで育ててくれた親なのですから。
これだけは事実です。