トーンアームの調整
これは大変大切だと私は思う。私はずいぶんとたくさんのお宅にお邪魔して聞いてきた、しかしそのどこもトーンアームが調整不足だった。
これはとても残念な事なのである。
どんなに優れたトーンアームを所有していても、大切なのは何を使っているかではなく、実際に出てくる音である。
私は今、たいしたプレーヤーを使っている訳でも、たいしたトーンアームを使っている訳でもない。
それは何故か?
特にトーンアームはそのものの精度も大切だが、調整いかんで出てくる音に雲泥の差のある事を身をもって知っているからだ。
確かに私が今まで使ったトーンアームの中で最高だったのは主観ではあるが、サエクのWE-506/30である。
しかし、そのサエクのアームからそれなりの音を鳴らすのは調整が難しく、並大抵でない努力が必要だ。
先ずはみんなボードへの穴あけからして他人任せではないか、みんなオーバーハングがずれている、ほとんどがレコードの内周で音が歪んでいる、私はキャビネットから作りピッタリ来るまで何度も穴をあけなおしたものだ、どんなに精巧なボール盤をもっていても、しっかりポンチを打ったとしても。
ドリルの刃は必ずどちらかに逃げるものだ、プロが穴をあけるところをみた事もあるが、実に素晴らしい、確かにある程度ヘッドシェルの所で合わせられる、みんなそれすらドンピシャ合ってないのがほとんどである。
オーバーハング、針圧、ラテラル、インサイドフォースキャンセラー、水平これらが耳で聞いてドンピシャあってはじめて凄い音は鳴り響く。
キャビネットの材質もトーンアームの音に凄く影響する、よく考えてほしい、ターンテーブルのセンタースピンドルと、アームの回転軸は引っ張りあってある事を、色々作って来たが板は単板ではなく鉛やアルミをあえて間に張り合わせ複合させた方が難易度は高いが上手くいく事が多い、しかし色々な素材を重ねるのに一番下と一番上は固い木が良い。
鉛やアルミはあくまで木と合わさって固有の振動や響きを抑える為だけに使い、あくまでも木の内部損失率を使い美しい響きを作る為だ。
あとはターンテーブルの下に敷く物は柔らかいものは極力やめた方が良いと思う、適度に響き内部損失率があり、固く、めの詰まった黒檀やチークの木が良い。それは何故か?
一時テニスボールやゴルフボールを下に敷くのが流行った事があった、私もやってみた、確かにスピーカーからの振動から隔離される為に、S/N比は上がり広がりのある音になるが、エネルギーロスがおこり、ティンパニーやバスドラムのアタック音が甘くなり、音に芯がなくなる、だから結局みんな止めた筈だ。
ゴム等のインシュレーターをどうしてメーカーがはじめから付けているのか私には分からない。
黒檀の3センチ角のインシュレーターをターンテーブルの下に敷くと音は格段に良くなる。
楓や桜も悪くはないがやはり一番は黒檀だ。
青黒檀が良いがなかなか一般には販売されていないし値段も高価である。
私は青黒檀を加工して使っている。
とにかくアナログはCDに比べ今のところ情報量がかなり多く聞こえる。
その膨大な情報をいかんなく拾ってほしい。
では何故アナログの方が音が優れているか?
普通電気製品は電源を必要とする、どんなに家庭の中で電源コンセントを分けたとしても、普通は元の配電盤の所から共通である。
もうお分かりだろうか。
プリアンプ、パワーアンプ、CDプレーヤー、ターンテーブルと共通の電源なのだ、その各々がノイズを出しお互いの電気に影響をあたえている。
しかし、アナログはカートリッヂの自家発電である、他の機器からの影響はあるが、カートリッヂはあまり他の機器に影響を与えない、ピュアな音楽信号を自分で作っているため音が格段に優れている、と説明がつく。
そこで先程のキャビネットの木に鉛の層を入れる意味がお分かりだろうか。
では何故トーンアームの微調整で激変するのか?
MMカートリッヂでもフォノイコライザーを通る、その時にかなりの増幅率となる、ましてやそれがMCカートリッヂになるとその増幅率は膨大なものとなる。お分かりだろうか?
だからちょっとした事が物凄い差になりスピーカーから出る訳だ、オーディオの回路は増幅の連続だ、だから入り口にいくに従い、その変化は甚大だ。
電源やスピーカーケーブルで音が変わるのとは、無関係ではないが、それとはかなり違った変化をするのだ。
みんなその変化を分かっていない。
音ばかり聞いてるからだ、全体を聞ける様にならなければケーブルの差も、トーンアーム調整による変化も分からない。
私もふくめ、自分が分かっていない事を心底知り、認めるのは簡単ではない。
人はそこからスタート出来る。
頑張っていただきたい。
私はそう思う。