深夜の小音量再生
このお話は少し前の事になる。
久し振りで眠れず、深夜に聞いてみた。
しかしオーディオを見渡してみると、随分ケーブルが変わった、以前のウエスタンスピリッツならば考えられなかった、仲間に算数を教わり、勉強してリッツ線を作り、それを自分で気に入るとは想像も出来なかった。
プライドの高い性格からして、今までの自分にはあり得ない行動である、他の友人は、大丈夫か?そう思っていた事だろう。
とは言っても、今は気に入っているリッツ線を、いつまで繋げているかそれは分からない、いつか気になり元に戻すかも知れない、気まぐれだし、いつもないものねだりだからだ、でもいつもそうやってレベルアップをしてきた、しかし今回確かに違う。
しかしこの時期に、確かにリッツ線を作る機会に恵まれた、まるで十二年住んだこの部屋での集大成の様に、たまたまかも知れないが、確かにリッツ線を実験しだした。
離れて暮らしていた両親の実家を取り壊し、二世帯住宅を計画してから、一年二ヶ月が過ぎた、なかなか住宅ローンが通らなかった。
まるでその苦しみから逃げるように、リッツ線の実験を始めたような気がする、正直、精神的にはかなり辛かった。
しかし八月の終りに住宅ローンはあっさり通った、とても暑い日だった、それからまだ三ヶ月しか経っていなかったのだ、その期間は今振り返ると、随分長くも短くも感じる。
しかしその間のほぼ三ヶ月で、リッツ線ケーブルは遂に完成したのである、我ながら驚異的なスピードである、しかし自分としてはこれでもリッツ線実験は時間がかかった方だ。
作ったリッツ線は、ラインやスピーカーケーブルを総て合わせて、合計で50本位になる、その中でもラインケーブルが一番多いが。
これだけ住宅ローンの為にたくさんの書類を駆けずり回りながら集め、提出しながら、ビルダーと何度も打ち合わせをしながら、よくもこんなにたくさんのリッツ線ケーブルを作ったものだ。
いつこんなに作ったのだろう、どう考えても出来ない数なのだが、確かに他のケーブルの注文もこなし、遊びもして、作って試聴して、今もこのブログを忙しさの中で書いている。
久し振りでLA4の亡き王女の為のパバーヌをレコードで聞いた、冒頭のトライアングルは以前この音量では影も形もなかった、今日は右から左へ芯を伴いハッキリ聞こえた、これは間違いなくリッツ線に変えたからだ。
しかし、不思議なのは、トライアングル程細かい音は聞こえるが、大きな音量では中域や中低域は、今は音が小さいので明らかに減っている。
しかし、本当は減っているのではなく、音量の違いで耳で感じないだけだと気付いたのだ、音量は小さいが、音の前後左右上下の広がりや奥行きは全く変わっていない、そして重低音は明らかに増えている、これはある意味驚異的な事であると思う。
たくさんケーブルを作って来て思うが、完璧なものなど、どこにもないと言う事なのだ。
リッツ線の音は確かに細やかで、クリアーで柔らかい、しかし現行のウエスタンスピリッツケーブルの音も太く、ハッキリしていてやはり優れている。
どちらを選ぶかは使い手次第となるであろう。
そんなに簡単にどちらかに優劣はつけられない、そう思う。
リッツ線は小音量でも、効果を発揮した、素直な音になった。
しかし現行のウエスタンスピリッツケーブルと比べ、何かがなくなるのである、またその逆もある。
深夜の小音量再生は、私に、そんな事を語りかけてきた。
ハープシコードの音は、今までは金属的な音がしていた、今日は違う、弦の音が波の様に、奥行きをもってしっかり鳴った。
しかし静かな時間、細かく綺麗な音だ。
これは少し前のお話だ、何かの参考になればと呟いてみた。
おやすみ。