オーディオケーブル間違いだらけな聞き比べ
とんでもない比較試聴をされる方がいらっしゃる。特定の楽器の音や、ソフトに入ってるある音だけをこのケーブルは鳴るとか鳴らないとか、そんな聞き比べをされるマニア先生がいらっしゃる。そしてそれだけでケーブルの優劣を決める。それを周りに言いふらす。
それでは、まるで子供レベルである。オーディオは音楽を聞くものである。その試聴のしかたはそれを既に忘れている。
ビルエバンスのCDに録音されている地下鉄?の音や、エリッククラプトンのアンプラグドに録音されている、足を踏み鳴らす音が鳴るとか鳴らないとか。確かに鳴らないよりは鳴った方が面白いのかも知れないが、私にはどうでもいい事である。
聞いていていい加減嫌になってくる。ある意味ミス録音である。そんなものがリアルに鳴ったところで何なのだろう。
そんな方のオーディオシステムは、常にそこだけを求めているので、他のバランスが崩れている事を分かっていない。
そんな特定の音だけを求めなくとも、総てがしっかりしていればその音も鳴っている筈である。
ケーブルの比較とは色々な要素があるが、先ずは各楽器の分離のしかたやその溶け込み方である。
そしてノイズである。ケーブルによってノイズはかなり違うのである。
そしてダイナミックレンジやS/Nや空間の表現や音の奥行きや広がりである。書けばきりがないが色々な方向から聞かなければならず、ケーブルの比較試聴はとても疲れるのである。
そんなレベルのお話なのに何が鳴るの鳴らないの、馬鹿らしくて聞いていられない。そんな事どうでもいい。
確かにオーディオを聞き比べる時、人は、所詮ご自分のシステムの音との比較になる。ならばそのご自分の器を越える事は永遠に出来ない。
しかし私の様にある日突然、良いと思って聞いていた自分のシステムより、遥かに良い音を鳴らしているシステムに出会った時のショツクと感動は、忘れない。
しかもそのシステムが、自分の所有するシステムより遥かに安価なシステムだったらどうだろう。
その時私は打ちのめされたが、自分のオーディオは大したことのないことに気が付いた。
その方に私は伺った。何をしたらこんな立派な音になるのか?と。答えは簡単なものだった。「オーディオは、正しくやっていれば簡単ではないが、最後必ずちゃんと鳴ります」と言い放った。
なる程…自分が努力して鳴らしたノウハウを他人に伝えたくないんではなく、簡単には伝えられないのだと解釈した。
私はそのまま感じるままに言葉をぶつけてみた。お相手は一言、うんっと言っただけだった。
その方のシステムは安くはないが、三十年前で50万円位のシステムだったと思う。
その時私は、オーディオは機材の優劣の差ではないことを知ったのである。
確かスピーカーケーブルはSONYのリッツ線だったと思う。残念ながらラインケーブルは覚えていない。
今も覚えている、純粋な整った鳴り方だった。そして二本のスピーカーが鳴らしてるとは到底思えない、スピーカーが全くないような鳴り方だった。
黒檀製ボックスのYAMAHA NS-1000だった。私も購入してみたが、遂に全く鳴らすことは出来なかった。
その体験が私を大きく成長させた。そして元オーディオ評論家だった方と知り合った。
評論家とは、仲の良いメーカーの商品に都合の良いように評価を出来る事が条件付きなのだそうだ。
その代わり、色々な高価な機材やケーブルを、無料で付いているメーカーから進呈される異様な世界。
腰巾着みたいだ、それが嫌になり、オーディオ評論家を辞めたと聞いた。
オーディオ雑誌を眺め、評論家の試聴結果を読んでも参考にもならないことが分かる、よって答えは出ない。
ましてや、特定の楽器やソフトに入ってる特殊な音を、鳴ってる鳴ってない等と低俗な比較方法はやめた方が良いと思う。
オーディオはそんなに簡単な趣味ではない。最後は正しい方向に進んできた経験に裏打ちされた技術と、たぐいまれなセンスである。良い音は貴方が作るのだ。
貴方のオーディオは実は、まだまだ鳴る。