なぜ位相は合わないのか
私もそうだった。みなさんは勘違いしている、極端な例だが、これを理解しないと根本的な鳴り方を理解出来ない。一本だけスピーカーシステムがあったと仮定しよう。
そのスピーカーはLCネットワークでの3ウェイだったとしよう、さてこの一本のスピーカーを完璧に正常に動作させる事が出来るかである。お断りしておくが、あくまで完成されたメーカー品ではなく、クラフトスピーカーでのお話である。
現に私も含め、誰も出来ないではないか、それがそもそもの答えなのである。
それを心底理解するには16㎝位の密閉箱に入れたフルレンジ一本の音を一ヶ月程モノラルで聞き込み、頭に叩き込む、それからご自分のシステムのスピーカーを一本だけモノラル再生してみる。と言うのが一般的である。
センスがあれば、そのあまりの差にがっかりする筈である。密閉箱に入ったフルレンジ一発の音は、耳が慣れないとつまらないが、大型スピーカーより、軽やかでとても正しくレスポンスする。そしてコンデンサやコイルや抵抗や電気信号にとって妨げになるものは、ケーブル以外何も入っていないので、とても滑らかで、正しい鳴り方をするのである。しかしそれが総てではない。
しかし本当に早い動作をスピーカーがしても早くは感じず、むしろゆったりとした音に感じる、それが本当に早い鳴り方である。演奏者はスピーカーが早く鳴るように弾いてはいないからである。
特に女性ボーカルがとても優しく聞きやすい、そしてやっと気付く、ネットワークで継ぎ接ぎされたスピーカーは、フルレンジの様に位相は合わないのである。そして音がトロく重いのである。
ネットワークは様々なタイプがある、6dB12dB24dB一般的にはこんな感じであるが。
私はシンプルな6dBが優れていると思う。それらを用いてあたかもフルレンジの様に鳴らそうとするのだが、鳴らない。
さて一本のスピーカーすら鳴らないのにステレオは左右二本ある訳だ。その二本のスピーカーを全く同じに聞く位置で、合わさった同次元で動作させなければならない。私はその二本のスピーカーを完璧に鳴らす人をオーディオ人生の中で二人だけ知っている。
しかし、私にはそのセッティングが出来ない。ならばいっその事2ウェイにしてみようとやってみた。かなり上手く鳴ったが、やはりフルレンジの軽やかな音とは違い完璧にはほど遠い。
二本のスピーカーがあるから、位相管理は凡人には無理である。二等辺三角形の頂点で聞くなどそんな理論はもっての他である。
スピーカーは本来は、二本ともフラットが基本である。音の奥行きが全く違うからである。部屋によってその人によって全く違うからである。
今のスピーカーの位相が完璧だと思っている貴方、総て錯覚である。
しかし6ウェイのマルチは見事に鳴っていた。今のチャンネルデバイダーや位相補正のイコライザーはレベルが違うと言う事ではないだろうか。
マルチは無理だとしても、先ずは、フルレンジを聞こう、それが分からないとオーディオは出来ない。
そして、機材を変えても音に天地の差はない。アンプは重くパワーのある方が良い?それは全くのナンセンス、極限迄音の良いアンプを作ろうとした結果、重くなったが正解。
そして、音が変わったのと良くなったのは別のお話である。突き詰めていくと、そこに気が付く筈である。
そして球の音と石の音、優れたものならば軍配は石に上がる、真空管は振動に弱い、トランジスタはそんなレベルでない。
真空管アンプの雰囲気が好きだ、と話されるのならば趣味の世界としては分かる。しかし、なくなっていったものにはちゃんとした理由があるのである。
それに、これはトランジスタアンプにも少しは言える事だが、良い音になるまで真空管アンプは時間がかかり過ぎる。
やはり聞きたい時に早く良い音を聞きたい、私はそう思う。
しかし、位相管理の問題はオーディオにとって、スピーカーが二本ある限り、永遠に残る課題である。