今のウエスタンスピリッツサウンド
とてもコンサートホールの音に似てきたと思う。と言うとどこのコンサートホールで何を聞いた音だ?と言われそうであるが。クラシックコンサートをホールで聞いた雰囲気にとても似ているとしか答える事は出来ない。
(ロッシーニ)歌劇(セビリアの理髪師)序曲 オルフェウス室内管弦楽団 グラモフォン盤である。
奥行きや広がりがあり、あり得ない様な現実離れした音は一切なく、色濃くクリアーな太い音に感じる。
そして、立ち上がり立ち下がり(制動制止)が早く切れが良い。その総てになんとも言えない分厚さと深みがあるのである。
静寂の中から突然驚く程マックス迄再生しているが、全くうるさくはないのである。
この部屋は越してきて一年八ヶ月になる、まだこれからも馴染むとは思うが、最近やっとオーディオと馴染んで来たと思う。
最近音量を絞って窓を開け放ち鳴らしていたり、大音量で部屋を締め切り鳴らしていたり、とにかくずっと色んなジャンルを鳴らしっぱなしにしている。
乾いた音ではなくとても艶っぽくなってきた、しかしここまで馴染んでくる迄に、部屋の響き自体も実に色んな変化をしてきた。
簡単に話すと一進一退を繰り返す。それが数々の実験の結果と合わさり、実に総てをバランスさせるのが難しかった。
新しい部屋はなかなか思うように鳴ってくれない、これは先に新たな部屋に住まわれた方から散々聞いてきた。
しかしこの部屋は、形状が山小屋の様で特殊な形をしている。とにかく越してきて初めて鳴らした時は実に酷い音だった。
言葉で表現出来ない位酷い音で、もうオーディオは出来ないと思った程酷かった。あえてその鳴り方を言葉にしてみると、艶がなく中音もうるさく、高域はざらざらで低音は低い音階が全く鳴らなかった。
全体的に帯域バランスがバラバラだった。そして新しい部屋は、屋内配線もコンセントも新しく、壁や柱や床はパッツンパッツンで、全く隙間がないのである。
つまり収まるところに総ての建材が収まっていない状態なのである。
建材は色んな気温や気候にさらされて、なりたい形に変化していくのを初めて理解したのである。
つまり新しい部屋は、無理やりに留められた木材同士が、足を引っ張りあっている苦しい状態と言えるだろう。
新居に引っ越して数ヶ月すると、壁の中のあちこちから木材や釘が折れる様な鋭い音がしてくる。
ビルダーに聞いてみると、壁の中の音が鳴り出したらあちこち適度に緩んできて、本当の完成が近づき、音も良くなって来るでしょうとのことだった。
つまり部屋もウォーミングアップみたいなものが必要になる様である。
それらと数々の実験結果がうまい具合に重なり、今のウエスタンスピリッツサウンドが構築されたのだと思う。
この部屋は平行面が少ないので定在波が少い設計になっている、と、ビルダーがお話になっていた。今それを思い出した。
汚い音は鳴らさない、本当に聞きやすい音になった。