オーディオケーブル
みなさんはどの位オーディオケーブルをご理解されているでしょうか?市販されてるオーディオケーブルの中で私が良いと思ったのは、高級なケーブルではなく、中級クラスのベルデンです。
ピン端子のついたものや、自作派の為に切り売りもされています。そのベルデンケーブルに個々でチョイスした端子を付けて、私も楽しんだものです。
しかし、34歳のある日、所沢にある、有名なヴィンテージオーディオショップに伺った時、素晴らしいケーブルを作っていらした方と出会ったのです。
仮にその方をHさんとします。色々話を伺ってみると、ウエスタンの334Bトランスからほどいたワイアーに、ご自分で絹糸を強く巻き付けケーブルを作っているとの事でした。
Hさんは一週間後二本の絹巻きケーブルを作って、世田谷の自宅迄ご持参してくれたのです。
見るなり凄みを感じ、惚れ込みました。「こんなに細い線に、こんなに綺麗に固く絹糸を巻き付けられるものなのか?」そう思いました。
そのHさんも、私と同じに「売ってるケーブルの中ではベルデンが一番自然で、ましな音がする」とおっしゃられました。
「最近の高いケーブルは、太いだけで何だか訳の分からない音がする」と言われ、同感でした。
しかしベルデンは、「音が甘いと」言われました。作りが甘いのと、石油系の被膜がいけないと言われました。
そして、実際にHさんの絹巻きウエスタンケーブルを繋ぎ聞いてみると、直ぐに違いが分かりました。
音が耳に絡まず、芯があり引き締まり、総ての音が心地よく分離したのです。絵空事だった音が生命を伴い、うるさくなくこちらに飛んでくる、そんな感じです。自作ケーブル等と言う域を遥かに超越しておりました。
パキッと弾けた、格好いい音です。今でも、Hさんのケーブルは所有しております。そして私はHさんに頭を下げ、絹巻きケーブルの製作許可をいただきました。
驚きなのですが、Hさんのケーブルは、ホットもグランドも、0.4㎜程の細い単線だったのです、つまり二芯シールドです。
今聞いても凄いと思いますが、いかんせん素線が細すぎます。
ウエスタンスピリッツは、そこが起源となり、絹巻きケーブルを発展させたのです。
ホットとシールドの距離(被膜の厚さ)やグランドとホットの距離も徹底的に研究しました。
本当にやり尽くした、正にその言葉がピッタリです。そこから絡んだ糸が、少しずつほどけて、オーディオの真実が分かったのです。
ケーブルを作るとは、オーディオ全体を根本からしっかりと広い心と知識で理解しないと、作れないのです。素線の質だけを追い求めているだけでは、永遠に辿り着けません。
ケーブルだけを繋ぎ換えて、簡単に理解出来るとは、私には思えないのです。システムが各々に違う事も原因の一つと思います。
オーディオケーブルを作るとは、なかなか答えが出ず、実に広く正しい知識と根気がいるのです。
自作派の方も色々試してみて下さい。