凄いケーブルを作りたかった
若い頃は、良い機材を使わないと音が良くならないと思っていました、そしてあちこち、さ迷っておりました。
しかし、33歳の春、埼玉所沢のヴィンテージオーディオショップで、後に師匠となるウエスタン研究家のHさんとであったのです。
色々お話ししましたが、とても詳しく一週間後世田谷迄車で来て頂き、今の雛形になったウエスタンケーブルも作ってご持参してくれたのです。
ピンケーブル二本とスピーカーケーブル三本でした、ウエスタンのトランスからほどいた単線ケーブルで、細くて見るからに良さそうでした。
私は元々極太ケーブルは眼中になかったので、一発ではまりました、スッキリしていて滑らかで、まとまりのある穏やかな音でした。
それまでケーブルはベルデンを使って、それからはウエスタンの0.8㎜単線のスピーカーケーブルを使っていました。
それで良いと思っていました、何にも知らなかったのです、しかし、師匠のケーブルは別格でした、私は師匠に私も作れないか、作ってもいいかたずねました、「まあ無理だとは思うけどやってみたら」と言われ、ダメ出しをされ続けて何とか二年で免許皆伝となりました。
今は私のケーブルを師匠も認めてくれています、まるでレンジの広いウエスタンの音みたいだ、大したもんだと聞いて喜んでくれます。
でも単線のケーブルも悪くはないのですが、音のまとまりは良いのですが、やはり力がないのです、簡単に言うと、心にグッと来るものが少ないのです。
なので私はリッツ線の理論を図書館に通い、一から勉強して、研究を始めたのです。
ウエスタンスピリッツのケーブルの特長はなんと言っても外被でしょう、絹糸を綺麗に強く巻き付けて作ります。
音に付帯音をあまり付けずに、スッキリしていて素直なスピードの早い滑らかな音になります、個人的に昔から塩化ビニールなどの石油系の被膜の音が嫌いなのです、いつも疑問をもっていました。
外被の絹糸は重なったりしない様に一層だけでキレイに巻かなくては良い音にならないのです。
何人か弟子になりたいと来られた方がおりましたが、糸で指が擦れ豆が出来凄く指が痛くなるのです、そのまま我慢しながら二週間巻き続ける根性があれば、指が固くなり出来るのですが、やはり皆さん我慢できないのです、これでは入り口にすら入れません。
絹糸やリネン(麻糸)はマックスの力で強く綺麗に隙間なく巻かなければ優れたケーブルにはならないのです。
私が優れてるのでなく、私に向いた作業なのだと思います、巻いてて楽しくて仕方がないのです。
音が良いから絹糸やリネン巻きにするのです、そうでなければ大変な思いをしてまでも絹巻きやリネン巻きはしません、自分で言うのも変ですが綺麗です、手で巻いたとは思えないと思います、そして固いです。
そうでもなければ、素人の様にスミチュープでも被せれば良いのです、その方がコストも安いので値段も抑えられます、しかし、スミチュープ外被でケーブルを作ってみても、ちっとも良い音しないのです。
私は妥協が出来ない人間なのです。
手前味噌になりますが、なかなかのリッツ線が出来たと自負しております。
そんなケーブルを検証する為に自分のオーディオをまともになるように努力しているのです、ここ一ヶ月でウエスタンスピリッツの音は飛躍的に激変しました、私はオーディオの為にオーディオを上手く鳴らしたのではありません。
総ては優れたケーブルを作りたいが為のオーディオなのです。
マルチになって、整った穏やかな凄まじいクリアーな音質になりました、マルチの音とは、上手くいけばとても暖かい優しくもしなやかな力強い素敵な音です、まるで二本のスピーカーが消えたかの様な鳴り方です。
ウエスタンスピリッツは、今までにない、聞かれた方が驚く様な優れたケーブルを作りたかったのです。
ウエスタンスピリッツのケーブルは音は良いですが、長いのが作れないのと、固いので配線が少しやりづらいのがたまに傷ですね。
音は確実に良いです、万能ではありませんが、一度聞かれてみて下さい、どなたでも分かると思います。