オーディオが普通に鳴る事の大切さ
結局これが一番難しいのである。若い頃は現実離れしたとんでもない音を目指していた事があった。
しかし、今は違うと知った。生活しているその中の様々な音はよほどいきなり大きな音でもない限り違和感がない、つまり0(無)の音があるからである。
0からいかに大きな音が出るか、またいかに早く0に戻るか、その比率の大きなシステムが立派なオーディオシステムなのである。
オーディオ装置で聞いた音は歪んでいる、なので出来る限りその歪みをなくせば良いように思われるのだろうが、答えは違うのである。
歪んでいようがなんだろうが、そのまま録られた音を忠実に再生すれば良い。以外と録音で歪んでいるのでなくオーディオ装置が歪めているのである。
一番再生音を歪めているものは、ステレオ再生に必要な二本のスピーカーのセッテングなのである。私も含め、これが総てとは言わないが、しっかり合わさった状態になっていないから、上手く録られた通りに再生出来ず、違和感を生じるのである。
次に、素人が様々な考えで作ったネットワークが間違えてる事が実に多い。そして、ヴィンテージオーディオのオリジナル信仰が幾多の悲劇を生んだ。
製造され30~50年経ったオリジナルネットワークは、もう総て特にコンデンサの容量が抜けている。コンデンサはズバリ容量である。
そして、固定抵抗の数値も劣化で上がっている、抵抗は古くなると錆びて最後は切れる。
そんな事ならいっそのこと自作しようと間違えた独特な教科書を信じこみ作る。ネットワークは独特ではいけない、やはり教科書通りが一番優れているが、部品を購入しに行っても規格があるため、割り出した部品定数がない事が多い。
そこで皆さんは、妥協して揃えてしまう。そこから少しずつほころびが出てくるものなのである。しかし小数点以下の細かな誤差は、部品の製造側にもあるので、シビアにこしたことはないが、あまり気にする必要はない。
あまりシビアにやっても実際に耳で聞いてみるとその通りにならない。
後は理想とされるマルチドライブであるが、どんなに位相の合わせられるチャンネルデバイダーをもってしても、位相は合わせる事が出来ない。やはり位相は位置なのである。
一般的にマルチの音は綺麗だが中域と低域が広がって薄い、これにはちゃんとした根拠がある。マルチの音とLCネットワークの違いは、これはあくまでも主観だが、マルチはユニットが一斉に鳴った時に高域から鳴り始める。
それに対しLCネットワークは、底域から鳴り始める。ソフトを一枚決めておいて両者を聞き比べると、ハッキリとそれが分かる。なので上手く出来たLCネットワークは音が濃厚で太くレンジが広いのである。
しかしどちらが優れてるかと聞かれたら分からない。
マルチはLCネットワークの様な太い音は鳴らないが、高域特性に優れている。反してLCネットワークは音に勢いがあり、太い音を聞ける。
どちらを選択するかは経験と教養だろうと思う。しかしそれで良しとなる程オーディオは簡単ではない。
私が何千軒と聞いてきて上手く鳴っていたのは、間違いなくLCネットワークだった。
しかし大体の方は、そのLCネットワークと、二本のスピーカーの設置の仕方をご理解していないのである。こう思う、多分分からないのである。
私も、二本のスピーカーが正しく置かれた時の、素敵な友の音を聞かなければ、誠に幸せな人生を送る事になっただろうが、実際にその凄さを聞いてしまったのである。同じオーディオとは思えなかった。
しかし、それが決まったとしてもオーディオの違和感は残るだろう。ウエスタンスピリッツは徹底的に違和感を潰してきた。
数㎜単位で動かすスピーカーのセッテングは、なかなか一点が見つからない。見つかっても震度3程度の地震で簡単に動いてしまう、誠に厄介である。
元通りに測って位置を戻しても、定位は元には戻らないのである。
オーディオは点と線の合わさる一点を探すのがとてつもなく難しい。これが出来て初めて0が再生可能になるのである。
0になっていないオーディオは絶対にまともに鳴りはしない。これを見つけた者だけが本当の桃源郷を体感出来る。
ウエスタンスピリッツもまだまだである。