思い描いた音
頭の中に思い描いた音と言うものがありました。
鋭くも、抜けのいい情報量の多い、広がりのある綺麗な中音。
底力があり、引き締まった地獄の底から鳴るような、地を這うような風のような低く軽い低音。
何処までも高く、天をも突き抜けるかのような鋭くも鋭角な高音。
それら総ては現実的で優しく滑らかで色濃く、一切のうるささはない、そして、楽器やボーカルの定位が小さい。
このような音を思い描いていました、しかし、面白い程上手く鳴りません。
理想の鳴り方になったと思ったら今度は、ドライバーの音が明るすぎてうるさい、このような鳴り方は、一見クリアーに聞こえますが、うるさいのは帯域バランスが崩れているか、ネットワークに使っている部品の品位が低いからです。
マルチシステムにしてから、ユニットそれぞれの音を単独で聞いてみましたが、単体では音にも音楽にもなりません。
先ずはウーハーだけを先に鳴らし、次にドライバーツィーターと音を鳴らしていくと、それぞれのユニットが受け持つ帯域の意味が分かるような気がします。
低音を鳴らすにはドライバーもツィーターも必要になり、ドライバーを鳴らすにはウーハーもツィーターも必要になる事が分かります。
そしてツィーターを素敵に上手く鳴らす為には、ウーハーもドライバーも必要なのです、ツィーター単体では音はほとんど聞こえません。
ツィーターは全体の帯域を適度に牛耳り、ウーハーやドライバーの鳴り方を整え、ツィーター自体もしっかりと鳴るようになるのですが、しっかり鳴ると、ツィーターの存在自体が消えたかのような鳴り方をします。
総ての帯域がしっかり整って初めてそれぞれのユニットは、生かし合い繋がるのです。
ウエスタンスピリッツのスピーカーシステムは、JBL4560BKを軸としたスリーウェイオールマルチシステムです。
一番オーソドックスなユニットの組み合わせだと思います。
ウーハーは130Aです、ハイカットは800Hzです、ドライバーはLE‐85(ダイアフラムはUSAへら絞りラジアンに交換しています)です、ローカットが800Hzでハイカットは8kHzです、ツィーターはローカットが8kHzです。
ツィーターはエール音響のベリリウムタイプです、ドライバーと繋がるホーンはコーラルのAH‐500です、なぜこのホーンなのかですが。
たくさん使って来ましたが、一インチドライバーがそのままつく、フレアーカットが250Hzまで再生出来るホーンは他にありません。
繋がると言ってもスロートアダプターは駄目です、長くなり音道が計算どおりでなくなる為、ドライバーと上手く繋がらなくなります。
チャンネルデバイダーでもネットワークでも、綺麗にクロスしている訳ではなく、あえて250Hzのフレアーカットを持ったホーンを繋げて、800Hzでクロスさせるのがみそのようです。
そうする事でドライバーとウーハーは上手く繋がり、重厚で弾んだ素敵な中低域(特にジャズのウッドベース)を再生できるので す。
ウエスタンスピリッツのマルチシステムは、総てマイナス18dbクロスです。
ウーハーである130Aを中心に総て能率を101dbに合わさせると簡単に決まりました。
ユニットが同じ方は参考になさって下さい、ユニットやホーンが違うと、全く違う結果になることを申し添えておきます。
これだけで理想の音になる事はないですが、とりあえずは入り口へ来たことになるでしょう。
後は私のようになぜ鳴らないのかを、理論的に考えるといいと思います。
分かってしまえばそんなに難しいとは思えません、あまり世間の間違えた情報に惑わされないで下さい。
理想の音は本当は鳴らせないのかもしれませんが、まだまだですが、私はかなり近いところまで鳴らしたと思います。
しかし、理想の音はあってもここに至るまで、どうやったら良いか分からず、気がつくと約四十年の月日が経っていました。
早く気がつく、これが大切です、私は時間がかかりました。