荻窪の櫻井さん
櫻井さんの言葉とは「オーディオというものは一生かけてやるべきものです」この言葉に痺れておりました、全く同じに思っています。
ずっと一緒にオーディオを共にやってきた大先輩に是非連絡をとって頂き、聞いてみたいとお伝えし、ご無理を聞いていただき、伺って来た。
オーディオマニアならば、一度はその名を聞いた事のある超有名人のお宅である。
部屋は地下にあり、多分20畳はゆうにある、たくさんのシステムがあり、その総てを聞く事が出来ると聞いた。
その中でも有名なのは、ウエストレイクとウーレイとJBLパラゴンのスピーカーシステムである。
日本のマニアの中でもとにかく音が凄い、一関のベイシーと肩を並べる程と聞いていた。
櫻井さんのシステムは、雑誌やジコマンオーディオの本で紹介され、私は両方写真は見ているが、聞くのは初めてである、ずっと憧れていた。
私にとってオーディオは人生そのもの、どんな人物で、どの様に鳴らされてるのか興味があり、楽しみである。
システムそのものより、櫻井さんの胸を借りて、しっかりと話を聞きながら、音を聞いてきたい。
人のオーディオを聞くとき、私は音だけを聞くのではない、どの様な経緯を経て現在に至ったのか、そちらが重要だと考える。
少なくとも年齢的に私よりは遥かに先輩である、人生が音に滲み出ているはずである。
音ばかりが話題のマニアの中で、人間的にも多分トップクラスである事は間違いない。
予定時刻より少し遅れ到着、先ずは一階で色々お話をした、音を聞く前から既に櫻井さんの人間的な凄みを感じる。
地下に促され降りて行く、重い扉を開きリスニングルームへ入った途端、その空気の密度に息をのんだ。
四セットあったスピーカーシステムは更に増え、全部で七セットになっていたが、減ったものは何にもなかった。
先ずはウーレイ811B正直そのシンバルの音の鮮やかさにぶっ飛んだ、櫻井さんはジャズしか聞かない、こう話せば帯域バランスが崩壊していると思いきやそうではない、櫻井さんは総て分かった上でここまでジャズを鳴らしたのだろう。
アンプはほぼジェームス・ボンジョルノのものだった、櫻井さんはジェームス・ボンジョルノのアンプに心酔しているのが分かる。
私もかつてはそうだった、テァドラ、アンプジラ、スモ・ザ・パワー、スモ・ザ・ゴールド、アンプジラ2000に憧れて使って来た。
私は思った「手放さなければよかった」と、今はもうない音なのである、もう一度話す、櫻井さんは何一つ手放してはいない。
しかし残念ながら、期待のパラゴンは、今回はご機嫌が悪いのか聞けなかった。
次は追加されていたマーキュリーのスピーカーシステム、小さいがとてつもなく素晴らしく整った現代的な音に力を加えたかのような素晴らしい音が聞けた。
次にタンノイのリボリューション、再生周波数の広さ、レスポンスの良さ、帯域バランスの素晴らしさ、空いた口が塞がらなかった、まるで後ろのウエストレイクが鳴ってると錯覚するほどだった。
最後に聞いてみたかったウエストレイクのTM‐3を聞いた、一緒に来られたマニアがご持参されたカウント・ベイシーのウォーム・ブリーズ冒頭の一曲目の重低音の凄まじい事、まるでティラノサウルスが歩いて来たかのような、家の外から聞こえて来るような、大地を揺るがす音を初めて聞いた、因みにスーパーウーハーはありません、これはオーディオの中だけで起こり得る録音のミステイクだと思うが、オーディオが生を超えたと思える程の音だった。
全体的に余裕のある圧倒的な濃い繊細な音だった、比べる事じたい誠に失礼だが、我が家のJBL4560BKなど足下にも及ばない寂しい音に感じた。
しかし違う、櫻井さんはしっかりとご理解されている、クラシックを鳴らそうとするならば、もっと中低域が必要だと、氏の言葉からハッキリ出た言葉である「素晴らしい」妥協なくそう思った。
これには私も驚いた、ジャズを主体に鳴らす方は往々にして絶対にクラシックを認めない。
しかし櫻井さんはそこを心底ご理解されている、これはやはり経験から得た氏の音に対する姿勢であり、センスなのだと思う。
私に「センスと言う伝え方は、職人にとって良くない」とご指摘された方がいらっしゃる、私はずっと思っていた、でも突き詰めれば突き詰める程、オーディオを伝える為には、センスi以外の言葉はないのである。
つまるところオーディオはやはり、選ばれたる者にしか頂点を極める事はできないのだと思う。
今回も思った、やはりオーディオは使っているものの差だけではない、確かにそれも存在するが、要は分かっているかいないかそのセンスである。
この事に関し櫻井さんと熱く話し合ったが「やはり答えはどこにもない」これがお互いの答えである。
分かっているか分かっていないか、ただそれだけである。
櫻井サウンドを聞いて思った、ベイシーとは比較にもならない、間違いなく日本のオーディオシステムの中に於いてトップである。
しかし、別の意味でならば、今のウエスタンスピリッツの音も私は自信を持ってケーブルを含め一度聞いてみていただきたいと思った。
ウエスタンスピリッツの音とは、小さなフルレンジを聞いてるような錯覚を櫻井さんも起こす筈である。
でもオーディオに答えは何処にもないが、やはり最後は経験と泣いた数だけある痛みの理解と、センスである、これが分からないとオーディオは出来ない。
結局泣いた事もない、意に反し切り刻まれた事もない人々が、簡単に鳴らせる趣味ではないという事だという事です。
私は櫻井サウンドを聞いてきた一人としてそう感じた。
やはり凄いサウンドだと思う。
真似は出来ない、ならば私は私の経験とセンスで私の音を鳴らそうと思った。
今回の試聴を通し思った「これで終わった」こう思った瞬間にオーディオは終わりだと、ウエスタンスピリッツなどまだまだ終わりではない。
櫻井さん、本日はお忙しい中私のような若輩者の為に、お時間をさいていただき誠に感謝いたします。
今後ともウエスタンスピリッツを、宜しくお願いいたします。