布田にあった、豚カツ屋さん、かつ元が復活
とても嬉しかった。
国領の駅前で、かつ元のマスターに偶然再会した、久し振りで会ったマスターは自転車に乗り、とてもスッキリしたお顔をしておられた。
一言、また店やってるからとの事だった、私はここ半年、もう食べられないと、がっかりしていたのだった。
私は、京王線布田駅の近くにあった、かつ元に十年前二日酔いの昼に出会った。
平日の午後に食欲もなく何を食べようか、さ迷っていた、すると、どこかで嗅いだような、懐かしい油の臭いがした、小さな豚カツ屋さんだった、古くて美味しそうな店だった。
店のメニューを見るなり、うんっ?これって日本橋にあるかつ吉じゃないのと密かに思ったが、まさか調布のしかも布田にあるはずはないな、と思った、そして値段がかつ吉よりかなり安い、でも私は期待してヒレカツを注文した。
出てきましたよヒレカツが、おおーっ!これはかつ吉にそっくりだ、キャベツの千切りがかなり太く不揃いで大量だったが、豚カツはそっくりだ。
食べた、間違いない、この豚カツは間違いなくかつ吉だ、食べ終わった後、失礼とは思ったが、奥さんに、ここってかつ吉ですか?と私は聞いた。
奥さんはマスターに、かつ吉か?ってよ、お父さん!と嬉しそうに言った、分かる人には分かるんだねーとなり、しばしのお話になり、それから家内とちょくちょく通うようになった。
かつ吉のグループには秋葉原の丸五(まるご)がある、私はそこも秋葉原の時代から通っていた、丸五も二日酔いの昼に、全く食欲がないのに、油の臭いにつられて入ったら、目から鱗の味だったのだ、ラーメンも食べられそうもなかったのに、ご飯までおかわりして、総て食べてしまった、その位美味しいのである。
かつ元の豚カツは、丸五より柔らかく、かつ吉よりは衣が柔らかくサクサクで油もアッサリしていて美味しいと私は思う。
しかし残念な事に、気立ての優しい、元気に働いていらした奥様は、数年前に突然他界されてしまった。
そして去年、布田駅地下化の為の駅前の再開発により、かつ元は暮れに閉店してしまっていた、私は閉店したことすら知らなかった、四月ころ食べに行くと跡形もなく消えていた、もう食べる事が出来ないとがっかりしていたのだ、その極上の豚カツが再び食べられるとなれば、私が行かない筈がない。
マスターとお会いした次の日、家内とワクワクしながら行ってきた、家内は海老フライ、私はヒレカツ。
メンチカツやハンバーグやヒレのしょうが焼きや野菜フライやとん汁はなくなっていたが、味は全くかわらず、とても美味しかった、私はかつ元の代用品として、調布PARCOにある新宿さぼてんに二回ほど行ってみたが、同じ豚カツとは思えなかった。
値段はたいしてかわらない、キャベツの量は山の様に盛られ、普通の豚カツに付いている四倍はある、そのキャベツの千切りを少なめにと頼むと、マスターは機嫌が悪くなるのだ、聞いてみると、仕事の流れがその為に全部狂ってしまうのだそうだ、定食を食べていて、普通の人ならば、お腹がきつくて多分いったんは箸を置くだろうが、かつ元ならば女性でも総て食べられてしまうと思う。
それくらい美味しいのである。
キャベツの千切りは機械切りに変更され細くなったようだ、付いてくる味噌汁の量も味も半端でない。
京王線の国領駅の南口から歩いて五分位かな、値段や量ではない、とにかく美味しい、豚カツは個人的にはソースも確かに美味しいとは思うが、塩や醤油で食べるのがおすすめである、ウスターソースも他の店のと少し違い美味しい、豚カツイコールソースではありません、付いているレモンは豚カツにかけてはいけない、キャベツにお好みで搾りかける。
しかし私がかつ元を食べられるのも、後五ヶ月位である、長年の夢である、離れていた両親と暮らすために、実家を建てかえ引っ越す事になったからだ。
国領の豚カツ屋さん、かつ元は、めちゃめちゃ美味しいよ、このような豚カツ屋さんは探しても先ず出会う事はないと思う。
あえて住所は書かない、足で探して、行儀よく全部残さず食べていただきたい。