安易に装置を換えるなかれ。
真剣に音を良くしようとオーディオを突き詰めていくと、だんだん分からなくなるので、オーディオ雑誌を読んでは買い換えを繰り返す事になる。
何年もその繰り返しの果てに、いったいどれ程、音は良くなったのだろう。質は変化しても良くなったとは言いがたい。それも私にとって今は昔の話。今も昔もオーディオは実はそんなに変化していない。
流行りの音質が時代と共に、少し醒めたような音に変わったに過ぎない。昨今のオーディオ機器の値段は些かやり過ぎ。正直私は引いている。大して音も変わらないのにそんなにお金を払いたくない。
それよりは、今ままで愛着をもって使ってきたJBLを、もっとセンスの良いかっこいい音にしたい。ただそれだけである。
その為にどれだけの不必要な物がこの部屋にたまったのか?私は今、家を新築していて、引っ越しが近いので、部屋を片付けていてびっくりした。
何かの時に使うだろうと思ってとっておいたものは、二度と使う事はないと知った。でも使われる方がいるのならば、差し上げようと思っていた。しかしそれはちょっと失礼な気もした。自分が使わないものを他人に?と考えた。
今使っていないものは、単なる無用の長物。一部を除き、全部捨てる事にしたが、その量は、一度にはマンションのゴミ箱に入らない。少しずつ誤魔化しながら捨てる事にした。
すると本棚からとても素晴らしい本が出てきた。写真にある古びれた一冊の本である。オーディオ自由自在 これなんだ!キミの音は 小林一也。昔ずいぶん読んだ。かなり熱い本だ。
後にTRK(テープレコーダー研究所)と言う会社が時代は少し違うが、実はどれだけ凄い音を作っていたか、間接的にどれだけ私達がお世話になったか、を私は、知り合いを通し、かなり後に知ったのである。
この本こそが、真に音を良くする為のオーディオバイブルである。まどろっこしい説明は出来るだけ省いている。しかし、読んでとても分かりやすいと思った。
まだCDの時代ではなかった。この本は今でも販売されているのだろうか。多分もう絶版だろう。
安易に買い換えをするな。機材を使いこなせ。何故今買い換えるのかをまず考えろ。貴方の装置は、まだ三割程しか鳴っていない。オーディオは機材でなく、使いこなしが大切と何度も書いてある。読んで貴方だけのサウンドを作ろう。
そして、こう書いてある。音は音楽が対象ということ。生の音をじゅうぶんに聞かなければ、再生できないということ。回路や数学だけではだめだということ。考えは私とほぼ総て一致である。
探して、もしもあったら即購入!
光文社6-30 KAPPA BOOKS オーディオ自由自在 昭和五十四年の本である。