深夜の小音量再生
このお話しは少し前の内容である。恩師から預かったオルトフォンSPUクラシックG/Eのメンテを終えて、昼間から色々聞いている。
大きな音量から小さな音量迄色々なジャンルを聞かなければ真価は分からない。
恩師からは音が眠っていて貴方の鳴らしている様な鮮やかな優しく広がった低音が、下までのびる様な音にして欲しいとのご依頼であった。
預かり聞いてみた、ボケて眠っている、とても同じSPUとは思えなかった。早速中を開けてみた、新しいだけありダンパーは健全であった。
しかしカンチレバーに刺さって付いている薄いゴムのラバーは切れてなくなっていたので、総て剥がした。カンチレバーを引っ張るワイアーのテンションがかなり弱い。私のSPUの半分位しかない。これでは音が眠ってしまう。
これは、SPUクラシックになってから特に全部同じである。私はワイアーのテンションを三日間かけて自分の所有してるSPUと同じに調製してみたのである。
なぜ三日間かかるのか?一気にテンションを上げてしまうとワイアーが切れて、オシャカにしてしまうからである。少しずつテンションを上げてその安定を見ているのである。テンションワイアーは、緩める事は出来ず実に根気のいる作業である。
昨日その微調整が終わった。そして次にSPUをGシェルから外し、音をクリアーにする為に、普通のヘッドシェルに取り付けるのだが。
SPUは構造上マグネットが出っ張っていて、そこにスペーサーを挟み、少し浮かさなければ普通のヘッドシェルに取り付ける事は出来ないのである。
しかし、市販されてる金属のスペーサーでは音に品がない、なのでそれを雛形にして、私はいつも黒檀でスペーサーを自作するのである。
実に根気のいる作業であるが何とか作り装着した、その試聴をしているのだ。
このウエスタンスピリッツ製の黒檀で作ったスペーサーはいつも実に驚きの結果になる。
音が柔らかくボケないのである。黒檀のスペーサーを噛ませると音は実にゆったりして重心が低く重厚になるが音量が大きくなり音のスピードが速くなるのである。
やはり入り口の差は大きいと言わざるを得ない。
私はこう思う。アナログは、プリアンプの所までしっかりしていれば決まると思う。つまりケーブルである。
カートリッヂがしっかり動作して、トーンアームの調整がしっかりして、まともなケーブルが繋がっていれば必ずちゃんとなる。
そう思っている。そこに少しのスパイスを加える、それが今回のワイアーのテンションと黒檀スペーサーである。
石油系で作られた被膜に包まれたケーブルは、迷走電流が発生し音がくもるのである。ウエスタンスピリッツ製のケーブルは絹糸を強く巻き付けて被膜を作る、だから音が滑らかで強くピュアなのである。
それを深夜の小音量再生で確認したのである。大きな音を出せば多少は誤魔化せるが、小音量では誤魔化せない。恩師のオルトフォンは鮮やかな音に蘇った。