施設で暮らす母を思う
私の母はアルツハイマー型の認知症を患ってしまった。
私を生んで育ててくれた母なので、我々夫婦は最後まで自宅介護をしていくつもりで頑張りました。
しかし人によって同じ認知症でも症状や性格も違うので、素人に在宅介護は出来ないと、市の包括センターの方に教わりました。
そしてミンカイを紹介されました、早速アポイントをとり伺いお話しを聞いて来ました。
ミンカイとは民間介護施設紹介所の略です、事細かく母の状態をお伝えして、様々な施設の説明やその入居金額を聞きました。
そして紹介された何件かの施設を実際に見学して、細かく話を伺って来ました。
施設と言っても入居する本人の状態や性格によって、かなり待遇が違う事を知りました。
我々夫婦が求めた施設とは、何と言ってもアットホームな待遇です、一件目に伺った埼玉県行田市の施設はとてもアットホームな雰囲気で、施設内にデイサービスや様々なレクリエーションもあり、お医者さんも往診にいらして、良さそうでした。
何よりその施設の空気感が緩くてとても良さそうでした、何件かまわった後、そこに決めました。
お部屋の空きがあったのですが時間もなく、母を騙し家から連れ出すのはとても大変でした。
連れ出すのに成功した言葉とは「以前、母さんはお医者さんへ通ってたよね?その医院長先生が、母さんはたまに外へ出た方が良いと言ってたよ」と伝えてみたのです。
すると母は直ぐに立ち上がり、とても面倒くさがりながらも支度を始めたのです。
認知症の方と言うのは、プライドが高く、その理由は接する人総てに対し順番といおうか、ランクを付けているのです、
なので母の中では圧倒的な医学の力を持った、絶対的な病院の先生の意見を聞いたのです。
これから分かるように、認知症の人の奇妙な行動も本人の中では、ちゃんと理由があるのですが、直ぐに忘れてしまうのです。
しかし家族にはそれら総ては理解不能です、とにかく狂ってしまってる訳ですからね。
しかし会話もまともに出来なくなり、何にも出来なくなり、それが分かるときは、疎外感に苛まれとても不安になっているのです。
出来る限り家族の世話になりたくない、本人はそう思っています、出来るだけ本人を傷つけずに介護したいのですが、それは無理なのです。
そんな母を施設へ預けてから色々ありましたが、もうすぐ一年が経とうとしています。
要介護1だった母は今では要介護3になりました、去年は自分で立って歩けていたのですが、今は車椅子になり介護士さんの手を借りてなんとか立ち上がる事は出来るものの、もう歩く事は出来ません、多分、車椅子が楽なのを覚えてしまったのでしょう。
そして認知症は、母から殆どの記憶を奪いました、もうすぐ何にも分からなくなる時が来るでしょう。
でも私を生んで育ててくれたご恩忘れません、あなたは私の母で、私はあなたの息子です。
私には母が必要なのです。