母の事
母はアルツハイマー型の認知症を患い、今は少し離れた介護付きの施設に入っている。
要介護一から要介護三になった、あっという間に介護度は上がった。
去年は四月まで、家内と二人で何とか在宅介護をしていた、しかし奇行が増え、言葉も全く通じないため、市の包括センターへ相談に行ってみた。
するとミンカイを紹介された、ミンカイとは民間介護施設紹介所、介護士のお話はこうだった「私の母も施設に入れています」との事だった。
つまりこういう事なのです、認知症の方の介護は、素人には無理なのです。
介護士の方々はお仕事です、シフト制になっており、時間が来たら次の方へバトンを渡し休む事が出来ます。
ところが家庭での介護はどうでしょう、365日24時間です、認知症の方は見ていないと何をするか分かりません、最悪の場合、徘徊して帰ってこられなくなり、人知れず亡くなってしまう方もいるのです。
施設ならば誰かが必ず見ていてくれるし、入り口も出口も施錠されており、絶対に外に出られないようになっています。
私の母は私が見ていない僅かの間に、手に塗るアロエ軟膏をご飯に載せて食べていました 。
口紅や石鹸も食べてしまうし、整髪料や洗剤も平気で飲んでしまいます。
とにかく記憶力が全くないため、もう会話にならないのです、言葉と言うのは単語が重なり成り立ちますが、母に何を伝えても全く理解出来ないのです。
そしてお風呂に入りたがらなくなるのです、母は若い頃お風呂が好きで毎日入っていました。
多分面倒くさいのだと思いますが、半年位入らないので体からは常に悪臭が漂っていました。
施設に入った今は月に二回は入ってるみたいなので、悪臭は感じませんし、とても幸せそうです。
去年から会ってないので、そろそろお顔を見せたいと思います。
認知症の介護は、要介護一で既に在宅介護は不可能です、市や区の包括センターへ相談してみて下さい、必ず道は開けると思います。
「生みの親を施設へ預け楽をしてる」知らない方はそう思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし違います、在宅介護は甘いものではありません、介護をしてるこちらも壊れて来ます。
施設は本人と家族にとって一番の選択肢だと思います、私は母に手をかけそうになったので、家内が心配してくれたのです。
自分の親だからそうなるのだそうです、何度お風呂に入ってもらおうと支度しても、なかなか入ってもらえず、とても大変でした。
家内にもとても大変な思いをさせました、そして限界が来たのです。
何件かの介護施設を見学し、一番アットホームな施設に決めました。
何度か会いに行きましたが、とても穏やかな表情をしており、帰宅願望もなく母は在宅の時より幸せなのだと思います。
誰だって生みの親を介護施設へなんか入れたくありません、しかしこれはお互いの為に、ベストな選択肢だったと思います。