スピーカーの内振りセッティング
平行セッティングにするべきである、真剣に聴いたら直ぐに分かる、内振りセッティングの見た目に慣れてしまっている、私も昔はそうでした。
スピーカーから伝わる音と言うのは、見た目どおりに放射されてる訳ではありません。
先ずは平行にセッティングして、そこから僅かずつスピーカーを動かし、モノラルソフト(CD)をかけて音がセンターに来るように調整しなければならない。
二本のスピーカーを僅かに動かしただけで、音像が動くのが分かる。
先ずはその違いを分かる事が出きるかどうかが問題であるが、とにかく決まらない。
しかし避けては通れない道である、私はこの作業があまり得意でない。
行う時は必ず、セッティングに優れた友人をお呼びし、作業は二人で行う。
友人がリスニングポイントに座り私へ指示をくれる、私はその通りに左右二本のスピーカーを動かす。
人によっては聴く方によって背の高さや、耳の特性が違い、それではあなたに合っていない、そう思われるかもしれないが、そんな心配はご無用、そこそこ合った時は誰が聴いても大丈夫です。
今は故人になったが、かの有名な五味さんや奈良の南口さんは、ひたすらこのセッティングに明け暮れていらした。
なのでお二人のオーディオシステムからは、スピーカーが消えたような鳴り方をしたのである。
今二本のスピーカーが、無形のピアノをヴァイオリンを鳴らす、五味さんは良く話しておられた。
別に五味さんがオートグラフを使い、マッキントッシュの真空管アンプで鳴らしたり、奈良の南口さんがJBL4350を、テクニクスのパワーアンプA-1で鳴らされたからではない。
しかし何故かお二人とも、このセッティングにかんし、何にも話されなかったのである。
それが幾多の悲劇を産んだ、五味さんの文章の神秘さで、タンノイオートグラフは今でも大人気と聞く。
しかし同じようなシステムを所有され、たくさん聴かせていただいたが、どこも惨憺たる音質で、二本のスピーカーが消えたような音は鳴らせていなかった。
五味さんや南口さんは、世間に伝えても「どうせ誰にも分からないだろう、気違い扱いされるのが関の山だ」そう思ったのだと思う。
オートグラフは、部屋の壁をホーンとして使う事を前提として考えて設計されてるから、あのような内振りセッティングに見えるようになるが、理にかなっているのである。
奈良の南口さんは4350を実際は、後ろの壁に付けられ聞いていた、しかも平行に、そしてよく観察すると、左側のスピーカーが僅かに外側へ向いていた。
お二人のオーディオシステムはまるで生を聴いてるようで、二本のスピーカーの存在は消えていた。
「そんな鳴り方はしてなかった」こう話される方もいらっしゃるが、聴いた方の経験とセンスがないからだと思っています。
そんなセッティングが難しく嫌ならば、堂々とJBLパラゴンを鳴らしてみろと言いたい。
パラゴンはしっかり据える事が、もしも万が一上手く出来たら、似たような鳴り方をするように設計されている。
しかし並大抵では鳴らないスピーカーでもあります。
これから分かるように、誰が聴いてもセッティング次第では、二本のスピーカーは消えたような鳴り方に出来るが、出会った事は皆無である。
私が信頼を寄せてる友人はひたすらそのセッティングを求め、確かにそのようになっている。
スピーカーを内側に振るのは、その見た目に慣れてしまっていて、平行にすると間が抜けたような音になると錯覚している為である。
スピーカーの内振りセッティングは、帯域バランスにまで影響する事になる。
帯域バランスが崩れたままでは、オーディオは上手く鳴らせない。
スピーカーの内振りセッティングをやめるべし。
スピーカーのセッティングは、あなたの部屋の中に無限大にあります。
しかし探すのは正に至難の業であります。