お膳立て
オーディオはお部屋の中で王様のように扱わなければならない 、音楽を聞くときにしか必要とされないのであるが、壁側の総てを占領し、図体もでかい。
しかし残念ながら、そうしないとオーディオはまともに鳴ってくれない、他にはグランドピアノもその様なものである。
グランドピアノは今となっては、そうそう見かける事はないが、ことオーディオになると、部屋作りの為に支払えない程の負債を背負い、消えて行った方を何人も見てきた。
何故オーディオだけが人をそうさせてしまうのだろうか?やはりオーディオが音楽を鳴らすからだろう 。
そして圧倒的な音を聴いてみたくなる、いくらやっても究極の部屋など作れはしないのに。
それは何故か?あなた自身が図面をひいて、作れる訳ではないからである。
100パーセント設計士やビルダーに伝えられたとしても、立地条件や建築法や換気の問題など色々あり、結局は妥協の産物が出来上がるだけ。
後から「本当はこうでなかったのに」と思うしかない、何故この様になってしまうのか、答えは簡単である。
設計士もビルダーも音響の事はそこそこ分かっているのだが、個々のオーディオの事を理解している訳ではないからである。
我が家は私が少し忙しく現場にいけない僅かの間に、家の強度の問題で柱の数が増えて、部屋が思ったよりも狭くなってしまった。
本当は電源トランスを設置出来るスペースと、余った機材を入れる納戸のようなスペースを作る筈だった。
それもかなわなかった、もしもそのスペースがあったら、画期的な広いオーディオルームになるはずだった。
話は戻るが、そこそこのオーディオシステムになると、オーディオは神様の如くスペースをとり、またそのスペースが必要になるのである。
これだけ拘った筈のリスニングルームでさえ、床が弱く後から素人補強が必要だった。
しかしビルダーはこちらのオーディオレベルを知らないので「これで床の厚さはじゅうぶん」と言っていた
出来上がった部屋にオーディオシステムを運んだ日に、ビルダーが見にきた「こんなに大掛かりなシステムだったんですね、言ってくれればよかったのに」あれほど私は伝えたのに。
家を建てる時ビルダーは先ず間取りの使いやすさ、そしてキッチン、お風呂、トイレ、玄関、これらとても重要視する。
私が仕事で使うオーディオルームなど、単なる趣味の部屋くらいにしか考えてないのである。
私は「日本一のオーディオケーブルを作りたい、そのケーブルを最大限鳴らせる部屋を作ってほしい」と伝えた。
しかし結局はかなりのお膳立てをしなければならなかった。
ウエスタンスピリッツのオーディオルームの断面は、少し変わっている。
初めてこの部屋で鳴らした時は「これではオーディオは出来ない」そう思ったものだった。
しかし色々音質改善をしながら鳴らしていると、三年程で部屋は音楽に都合よく馴染んで来た。
オーディオルームとは楽器のようなものだと理解している、建って直ぐにいい音に鳴らないのである。
そしてオーディオを上手く鳴らすためのお膳立ても必要なのである、オーディオはただ名機を揃えただけでは鳴らないのである。
新しい部屋は上手く鳴るまで、最低でも三年はかかると知るべしである、この変化を毎日聴いてきたのも 今となってはいい経験だった。
今も個人的には、まだまだだが、とても上手く鳴ってると思う。