繋がれたシステムから生涯外れないケーブルを作りたい
購入されたお客様のシステムから生涯外されないケーブルを作りたかった、個人的に若い頃ケーブルには無頓着だった、確かにオーディオを揃えてから数年購入した時に機材に付属されてきたケーブルをそのまま何の疑いもなく使っていた、帯域バランスの事など全く知らずに。
ラックの裏に入るのが面倒だったけど裏に入ってみた、するとケーブルや機材に埃が乗っていた、とりあえず全部ラックから下ろし清掃してみた、その時機材やケーブルの端末も綺麗に磨いてみた、すると明らかに音が変わった、しかし『気持ちの問題だろう』その時はそう思った。
『機材が優れていたらケーブルを取り換えても大した変化はしないだろう』そう思っていた、機材を作る大変さも理解せずに、そして秋葉原で働きはじめ実にたくさんのケーブルの存在があった、当時ケーブルはあまり注目されていなかったように記憶しています。
しかしガード下の小さなお店の店頭にたくさんの種類のケーブルが並ぶようになってきた、更に数年後たくさんのケーブルの中から自分なりにケーブルをチョイスし購入してみた『確かに違う…』錯覚ではない確かに音は変わった。
そして詳しい同僚に聞いてみた『ケーブルで音は変わると思う?』と、すると『当たり前だよ、ケーブルに拘らないならオーディオやってるなんて言えないよ』との事だった。
『そうか…当たり前の事だったのか』いきなり頭をぶん殴られたような少し落ち込んだ気分になった、それがケーブルに拘る原因になった、それから毎月の給料日が楽しみになり、給料が入るとレコードやケーブルを買い漁った、そして色々な種類があるが買い換えてる内にあまり太いケーブルは私は好きでない事に気が付いた。
赤黒の平行を保った普通のスピーカーケーブルやソニーのリッツ線ピンケーブルが好きになった、その頃カナレやモガミのケーブルを買って自作もした、作った時は達成感からか良いのだが、やはり赤黒ケーブルやソニーのリッツ線に戻るのでした。
そしてみかん箱に二十個程のケーブルが増える事になった、月日は流れウエスタン研究家の後に師匠と慕う方と出会う事になり現在に至る、とにかく師匠がウエスタンのトランスから解き作ってくれた細い単線ケーブルが素晴らしく、今迄聴いてきたケーブルの中で間違いなくピカ一だった。
こう思った『私もこのような圧倒的なケーブルを作れるようになりたい』と、そしてこう思った『私のようにたくさんのケーブルを購入しなくても買われた方のシステムから生涯外される事のないケーブルを作れるようになろう』と。
しかしその様な安易なものではなかった、ケーブル作りは実に多岐に渡りとても困難なものであった、そして大変な時を経て今思う『ケーブルで音を牛耳る事は可能、ケーブルは一つの回路である』今はそう思う。
良い結果になったら何故?結果が駄目なら何故?ウエスタンスピリッツは常にそれとの闘いです、それは今でも、多分これからも…
ケーブルで音は変わる、何をやってもオーディオは音が変わる、しかし本当に良くなったのか?ただ変わっただけなのかは全く別の話しなのです、それを確実に判断し丁寧に重ねていく、これがオーディオだと思う、色々経験してきたが偶然など一つもなかった、全ては説明がつきます。
それにしてもオーディオメーカーがどれ程の努力をして新製品をこの世にだしているのかが分かる気がする。