千葉のIさんご訪問
最近千葉のIさんと立場が逆転してしまった。元々は秋葉原で高級オーディオを販売していた時のお客様だった。つまり、私がオーディオを教える立場だったのである。
そしてIさんは、ウエスタンスピリッツケーブルのファンでもある。電源、スピーカー、ライン、フォノと総てにウエスタンスピリッツのケーブルを繋がれている。
歳は少し離れているが、お互い違う方向からオーディオを見つめ切磋琢磨してきた間柄なのである。
千葉のIさんはアルテック620Bとスペンドール、私はJBL4560BKである。
最近やっとIさんの教えを乞い、何とか自分が思うところ迄鳴ったとお伝えすると、明日予定ある?と聞かれた。
特に用はなかったので、ご試聴をお願いしたのである、さてどうだろうか。
私はオーディオを生業にしてるので、自分で聞いて音が良くなったと喜んでる場合ではない。やはり第三者の違う方向からの厳しいご指摘が必要なのである。
Iさんは、じっくり聞かれていたが、特にお顔が歪む事もなく、不満はないが、CDの高域が最後まで伸びず音が歪んでいるとのご指摘だった。
その時は、今間に合わせに使っているCDプレーヤーの限界だろうとの事だった。部屋にあるフィリップスLHH500Rを修理に出すことをすすめられた。
そしてIさんは風変わりなインシュレーターを六つご持参された。バック工芸(実は有名な会社)と書かれていた。少し前にお聞きして簡単に調べてはあった。
硬質な木材を旋盤でくりぬき、小さなお碗の様な形をしていて、見るからに良さそうな気がした。
そのインシュレーターをプリアンプとCDプレーヤーの下に三個ずつ敷いて聞いてみた。音の角がとれS/Nが上がった。
それでもCDの歪みは改善されず、クリアーになった分余計に粗が出た。そう、システムが極限に近く改善され、今まで聞こえなかった粗が出たのである。
次にアナログである。Iさんは電源コンセントをお持ちになった。メーカーは日本のAETであるが、作ってるのは明工社だった。こちらもかなりの変化を確認出来た、音が落ち着き太いのである。やはり明工社は素晴らしいコンセントを作るのである。
そのコンセントをアナログプレーヤーの電源に繋いだ。そしてCDから先程のインシュレーターを外し、アナログプレーヤーの下に三個敷いた。
やはりアナログも激変した、音に落ち着きがあり、数倍広がり奥行きを伴い、やはりS/Nが向上する。今まで敷いていた青黒檀と音は違うが、その時は双璧に感じたが、Iさんがご持参されたインシュレーターの方は、まだエージングが進んでいないからかもしれないと思った。
そして試聴を終え、Iさんがご持参された本番ノルマンディー産のカマンベールチーズと、小指大の小さな歯応えのあるスペイン産の胡瓜のピクルスと、ニンニクのペーストが詰まったスペインのオリーブの缶詰め、そしてモエ・シャンドン(シャンパン)をあけた。
モエが二人の前にあったのは、暑かったからか、達成感か分からないが、30分位の事だった。しかし、この飲み物と肴の組み合わせは絶妙だった。流石、世界中を飛び回り本物中の本物を知っているIさんである。
そして我が家にあった少し残っていたスペインのシェリー酒、ティオペペを飲み干し、更に二本のティオペペを二人で開けた。合計三本とちょっとを二人で飲んだ事になる。
モエは辛口の中では甘口だが、Iさんがご持参された肴で絶妙なバランスだった。当然ティオペペとの相性も抜群だった。なので、いくらでも飲めてしまうのである。
飲むものと一緒に食べるものは、やはり、何でも良いでは駄目なのである。55歳になり、初めてこんな素敵な飲み方を知ったのである。
オーディオも食材もお酒も拘りがなければ全くつまらないものになってしまう。それにしても、気持ちの良い酒だった。
最後Iさんは、駅に向かう道すがら一言仰った、ウエスタンスピリッツのアナログは少し音が薄い気がしたと。Iさんのターンテーブルはガラード301である、ウエスタンスピリッツのターンテーブルはYAMAHAのGT750(かなり改造してある)である。
ガラード301はアイドラードライブである。太く濃厚な音に対し、YAMAHAのGT750は、ダイレクトドライブであり、ゴロもなく繊細なタイトな音が特徴である。
その時私は、キャビネットが駄目だとIさんにお伝えしたが、良く考えてみるとターンテーブルの駆動方式や軸受けの違いの気もする、が、それもどこか少し違う気もする。
次の日お酒は全く残っていなかった、しかし、また飲みたくなってしまった(笑)
昨日はとても有意義な一日だった。そしてウエスタンスピリッツの音は、かなりのレベルに達していた事が分かった。
そして次の日Iさんからお借りしたインシュレーターも、AET(明工社)のコンセントも音が透明になり激変していた。
千葉のIさん、ありがとうございます。そしてごちそう様でした。ウエスタンスピリッツは、更に高嶺を目指します。
そして次の日Iさんから電話がかかってきた、とりとめのないお話から、本題へ入った。
ウエスタンスピリッツのアナログの音の薄い理由をIさんなりに考えて頂いたらしい。
ウエスタンスピリッツはノンシールドリッツ線平行絹巻きケーブルを使用してきた。
Iさんは何時もは新製品が完成する度に聞かれて優れていれば、購入される熱心なウエスタンスピリッツファンである。
しかし、今回は注文が来なかったのである。多分シールドの有無を悩み聞いていたのである。過去に一度ノンシールドで音が粗く薄くなったのである。それがIさんの中に残っていたのである。
音が薄く感じるのは、ノンシールドケーブルかも知れないと仰った。直ぐににピンっときた、そうかウエスタンスピリッツはスピーカーや機材やラックの下に振動対策の板を敷いたのだ。出来上がったケーブルを家内と聞いたのは、振動対策の前だったのである。
そのまま気付かずノンシールドのまま聞いて来たのである。条件が変わればケーブルも違う答えになると納得した。
Iさんのご指摘が気になり少し聞いてから、CDとプリとパワーを繋いでるケーブルをリッツ線シールド平行絹巻きに交換してみた。
驚くなかれ実にしっかりした強い音になり、今度はシールドの方が滑らかでクリアーになる事が分かった。
当然アナログの音は、最後までシールドになったため、Iさんのガラード程ではないが、濃厚な音になった。
しっかりした太い低域と滑らかで広がりのある解放的な中域と高域になった。
そしてCDも、まだ少しさちっていた高域が静かになり、上へ綺麗に伸びた。しかし、アナログプレーヤーの下は以前の青黒檀が良いかも知れない。それは何故かハウリングマージンが落ちたのである。このインシュレーターはもう少し聞き込んでみる。
振動対策の前後とはこれ程システムに変化をもたらしたのである。私は井の中の蛙になるところだった。
電気の理論やメカ的にスタジオのように鳴らそうとした私、本物のホールの音を作ろうと努力した千葉のIさん。
両者の考えは別の所で一致していると思えたが、本物のホールの音を求め努力されたIさんが正しかったのだと思い知った。
オーディオは経験と粘着質な性格と、広い知識と勉強が必要だ、メカや回路や動作原理を熟知しているだけでは良い音を構築する事は出来ない。やはり、最後はやる気とセンスである。
音は、CDもアナログも濃厚なしっかりした強い音になった。Iさん、いつもありがとうございます。