船橋のIさん
前回JBL4560BKAのネットワークを外したスペースをチークの板で塞ぎ、ドライバーの裏蓋の溶けたウレタンをはがし、ニードルフエルトを張り付けた。
そしてダイアフラムの入力端子を磨いて、JBLオリジナルの内部配線に戻す作業をしていた。すると目の端に入った文字に強く違和感を覚えた。
うんっ?私のドライバーはLE85で8Ω、Iさんのドライバーは2420で16Ωだった、てっきり8Ωだと思っていた。
これでハッキリ鳴らない答えがでた、単純に私のミスである、これでは鳴る筈がない。8Ω動作で作ったネットワークを16Ωで計算すると、現在はドライバーのローカットが400Hzクロスで、ハイカットは10000Hzでカットとなっている。
本来800Hzと5000Hzのカットの筈だった。それに固定抵抗の数値もずれている。
ありゃりゃ!インピーダンスが倍になれば、コンデンサは倍の定数になり、コイルは半分の定数になる。
ドライバーはウーハーともツィーターとも完全に再生周波数が被り、打ち消しあってしまっている。対策法は、8ΩのUSAラジアンダイアフラムに交換する事である、ダイアフラムを16Ωから8Ωに交換すると8Ωのドライバーになるのである。
これで2420はLE85になり、三つのユニットは手を結ぶ筈である。言い訳になるが、この初歩的なミスは結構多いと思う、みなさんも気を付けていただきたいと思う。
すぐにダイアフラムを取り寄せ、本日、ラジアンに交換である、やっとウエスタンスピリッツと同じ音になる筈である。Iさん、こちらの初歩的なミス、誠に申し訳ありません。
もう失敗は許されない、今日の作業はとても大きな意味を持つ肝心なところである。
多分ここが山場だろう。
一年やって来たのだ、ウエスタンスピリッツを越えて欲しい、同じものを使ってこれ程音に差が出る筈がない。
さて、どうなるだろうか。
ラジアンを見たIさんの一言、綺麗だ、端子もピカピカで気持ちが良い。そしてJBLオリジナルとの違いを細かく説明して、ホットはリッツ線0.12㎜単線を108本に、グランドは1.6㎜単線一本に交換する作業に入った。
その前に、前回行ったネットワークを外したスペースに張り付けた板とボックスの間の隙間をエアコンパテでしっかり埋めた。
そして第一段の作業が終わり鳴らしてみた、数秒間位、位相がずれた音になり、三つのユニットは遂に手を結んだのである。
当たり前たが、音はやっとウエスタンスピリッツと並んだ。それでもまだ不十分なので、ホーンの喉元と開口部の少し手前に分厚くエアコンパテを張り付けた。
そして聞いてみた、ホーンが余計な響きをしないので、濃厚な落ち着いた前に出てくる音になり、ここまで来ればもう、並のオーディオでは太刀打ち出来ないレベルにもって来れた。
Iさんは一言、「参りました」と言ってくれた。目の前でブログの文章の様に、変わって行くのがハッキリ分かったと驚いていた。明日どうやって会社の休みをとろうか考えていたようである。
輸入盤のレコードは、より自然に、日本盤のレコードも、全く違う鳴り方になったが、それでも尚私は違和感を覚えた。
これはカートリッヂだと思い針圧を測ってみた、4.5g位はあった。IさんのカートリッヂはオルトフォンSPUマイスターであるから3.30gである。
針圧を合わせて聞いてみた、まだ鳴らし不足なので完全とは言えないが、違和感はなくなった。
鳴らして一時間位で音は目まぐるしく変化してきた、Iさん、やっと鳴ったね。よくここまでついて来てくれました。
まだ、三ヶ所電源ケーブルを交換するところがある。これらが総て決まり、そこから半年経ったIさんのサウンドは、正に桃源郷の様な音になるだろう。
後は、Iさんが鳴らす時間をどれだけとれるかである。
Iさん、もう出口は近い。元気を出して下さい。