JBLの個性を見方につけろ
JBLはジャスやロックに合う、良く聞くこのへんてこな意見。私も確かに昔、新宿歌舞伎町で聞いたJBLに憧れを抱いた一人である。
しかし私が憧れを抱いたのは、JBLのサウンドではない。いつか鳴りそうなその神秘的なフォルムである。
JBLのサウンドはむしろ私にはマイナスイメージだった。全体的に薄く乾いていて、暗い艶のないボコボコサウンド、これが第一印象だった。
しかし私は根拠は全くないが、いつかちゃんと鳴らせるであろう自信だけはあったのである。
それは先見の明等と言う崇高なものではなく、ただ若く盲目的な一方的な片想いの一目惚れ的な憧れだけだったと思う。
到底、気高く叶わぬ相手への一方的な恋、そんな感じだったと思う。しかし何の根拠も経験もなく購入したJBLは、意に反し全く上手く鳴らすことは出来なかった。
「やっぱりな」そう思った。そして、たくさんのベテランに散々蹴散らされた、そんなもの全く用途が違う、家庭で上手く鳴らせるスピーカーではない、お前はアホ?かと。
確かにJBLを購入する前に使っていたコーラルXⅦの方が、鳴らしやすく音も整っていた。それでも私はJBLを見てるだけでワクワクしていたのである。
「今は鳴らないが、いつか必ず鳴らしてみせる」この自信がどこから来るのか自分でもさっぱり分からなかった。
しかし個性が強いと言う事は、その個性を良い方に導いてあげれば、真に鳴った時素晴らしいのでは?と思っていた。そして、それは確かに事実だったのだが、これが地獄の一丁目になろうとは思ってもみなかったのである。
JBLと言う独特なユニットに魅せられてしまった為に、あまりに馬鹿にされ私は数十年間あまり他人の意見を聞かなくなってしまったのである。
それが正解だったとも言えるが、やはり同じような経験をされた方と所沢で出会ったのである。その方の意見が総て正しかった訳ではないが、かなり参考にはなった。
そこから二十年ひたすら努力を重ねて来てやっと、まだまだだが思った様な鳴り方になってきたのである。
つまりJBL独特なサウンドの個性を上手く活かす事に成功したと言える。ウエスタンスピリッツのJBLは、情報量が過多な位である。そしてクリアーであり且つ総ての帯域で音が引き締まっている。
しかし一般的なJBLの様に、特定の周波数で耳を縛られる事がなく、アルテックの様に軽やかで広いレンジはないが、重心が低く力強く静かなのである。
若い頃は私もご多分に漏れず機材をかなり交換してみた事がある。しかしアンプを取り替えてみても大きな違いはないものである。
そして気が付いた。JBLが特殊で鳴らないのではなく、こちらの経験と技術不足で知識や感性に乏しく、何にも分からない為、鳴らせないだけだと。
「ならば、もの言えぬJBLの手助けをしよう」と思った。そして結局自分は何にも分かってなかった事に気が付いた。
そこから私のJBLは常に、劇的な変化を遂げ続け、今に至るのである。
つまりこうである、一般的なJBLサウンドを鳴らされてる方の意見は必要なく、独自の方法が必要になる。
ウエスタンスピリッツは誰の意見も必要なく思えた。しかし世の中には自分よりも優れた方法を熟知されてる方がいらっしゃる。
私の場合やはり千葉のIさんだったと思う。彼の使っているものが総て優れてるとは限らないが、木材の持つ音の響きの調整や質量、その他様々なやり方はいつも感心せざるを得ない。
Iさんはアルテック、ウエスタンスピリッツはJBL、ここから先は多少鳴らし方の違いや使うものは違えど、お互い音を磨いてきた同士である。
アルテックもJBLも地獄の一丁目である事は間違いない。
Iさんのアルテックは、楽器を軽く弾いたような癒しのサウンド、ウエスタンスピリッツのJBLは、楽器を強く弾いたような対決姿勢のサウンドである。この両者の差が埋まる事はないだろうが、それは個性であり、その中にもやはり良い音の定義は存在する。
JBLは鳴らないのではない、貴方が鳴らせないだけである。