総ては耳で判断する。
最近、色んなシュミレーションの出来るパソコンソフトで特性を調べてオーディオやってる人がいる。
その総てを否定する訳ではないが、ディスプレイとにらめっこしていても、永遠に決まらないと思う。
それはなぜか?
所詮は繋ぐマイクの性能でしかなく、聞くのは個々の耳だからだ。
精神衛生上スツキリしたい気持ちも分からないではないが、決まる筈がない。
更にモヤモヤすると思う。どんなに高価で正確と言われてる測定器で測っても、聞くのは人の耳である。
細かく言えば一人一人耳の特性や感じ方は違う。
シュミレートの結果が良くても聞いて良くなければ何の意味もない。
音作りは熟練した慣れと、たぐいまれなセンスが必要になってくる。
オーディオは先ず、貴方が上手く鳴らないと思っているレコードなりCDソフトを少しでも減らしていく事だ。
よく、こんな言葉を耳にする、このソフトは音が悪いから曲は良いけどあまり聞かないんだと。
アホか?と思う。
自分のシステムを疑うことすらしない。
腹がたつから、我が家に呼んで同じソフトを持参してもらい、聞いてもらうと、やっぱりJBLは良いなあ、低音が出ますねー、私もJBLにしたいなあ。
いくらですか?
ですよ。
こんな程度の答しか帰って来ないのか?
呆れて言葉もでない。
そんなに簡単なものではありません。
我が家のJBLは、とにかく驚くほど上手く鳴らなかった。
最近やっとである、しかもこの部屋から私は引っ越そうと考えている、このままでは今以上にならないからだ、更に高嶺に登りたい。これでお気付きか?実は、ほとんどの場合ソフトのせいではない。
貴方が上手く鳴らせてないだけの方が多い。
我が家だってそんなに立派に鳴ってると私は思っていない。
でも、こうは考えられないだろうか?良くならないソフトが上手くなった時、上手く鳴っていたソフトはもっと良く鳴る筈だと、しかし不思議な事が起こる、それまでは上手く鳴っていたソフトがたいしたことなく、鳴らなかったソフトがとても上手く鳴り、実はシンプルな良い録音だったりする、それまでとは違う今まで聞いてなかったソフトにこんな良い音が入っていたのかと。
私はそれを何度も経験してきた、ネットワーク等をいじるとそれまで聞いていたソフトは聞かなくなり、新たなソフトに手がのびて範囲が広がるときもある、またその逆もある。
だから聞く曲はシステムが選んでいる訳だ、貴方が選んでいるのではない、ならば鳴らないソフトを減らした方が良いに決まっている、そんな努力をコツコツと自分のペースでしてほしいと私は思う。
私が訪問した、たくさんの凄いと言われているかなり有名な人のシステムは、どれも実力の半分も鳴っていなかった。
非常に笑える。
これが事実だ、殆どの人はお金のかかったシステムを見た目だけで、圧倒されてしまうに過ぎない。
若い頃私もそうだった。
今、私は常に、冷静に自宅との比較が出来る様になった。
当然音が悪くても得るところはある。
私の判断力と自信は、揺らぐ事は少ない、相手の手の内は自分の経験からだいたい分かるからだ。
聞かなくても、部屋に入り、システムと置き方を見て、その方と二言三言話せばその部屋の響きと使っているものから、実は大体の再生音の想像はつく。
つまり、その場になって私に色々指摘されたからとバタバタするなと言いたい訳だ、その場で何を取り繕うとも、自ずと結果はもう出ているではないかと、それがプロフェッショナルだ。その時にどこをどうすればどうなるかはこちらには既にだいたい分かっている。が、それはプロでもやはりやってみないと分からない。
絶対などないからだ。
私は、自宅の音すら客観的に聞かなければならない。良くなったと喜んでいる場合ではないのだ。
大変な事だが、それが私の仕事だ。
実は、私は自宅で満足などしたことが一度もない。
言い方をかえるならば、そんな暇はない。
それが生業にすると言うことだ。
自分のシステムはむしろ、研究とその後の変化を理解し、引き出しに入れておき、お客様へ提供する、だから、自分のシステムは、そこそこに鳴っていれば私は良いのだ、でも有難い事にみんな聞いて驚く、私は色々やった事に対しての、変化と答えを知りたい訳だ、お客様のシステムをその人が鳴らしたいように、押し付けがましくなく、その人のベストにして差し上げるのが、プロフェッショナルだと私は思う。
だから、ウエスタンスピリッツの仕事には、固有の音や音決めのパターンは存在しないが、上手く鳴ってみると、やり方は違えど、どれも似たような音に仕上がるから不思議である。
その音は、お客様自身がこれで良しと決めた音だ。
だから、みんな本当はパソコンソフトを使わなくても、自分の音をしっかり持っているのだと思う、ただ、その方法とこちらへの伝え方を知らないだけだと思う。
私はいつも、前に終わった現場は音も含め頭から除外する、総て、一つとして同じようなやり方もケーブルの作り方もない。
しかし良い音の定義は私の頭の中にセンスとしてあり、それは言葉で伝える事は絶対に出来ない。
今書いていてもそれに気付く、文章は上手く伝わらないと。
私にも分からないからだ。だから私に、みんなやってるけど、これってどうなんだろう?と言う質問は意味がない。
ご心配なく。
でも、オーディオは心だ、生業にすると難しいのだ。オーディオは余程酷い組合せにでもなってない限り、良い音になる筈だ。
そして最後、オーディオはやはり部屋が肝心だ。