アルツハイマー型認知症
私の母親のお話しである、暫しお付き合いいただけたら幸いに思います。
「風邪をひいて具合が悪いから頭がおかしい」「今何時何分だ」「父さん病院でどうしてる?」ひたすらこの会話を繰り返している。
額を触っても熱があるどころか私よりも熱は少し低い、鼻水も出てない、喉も痛くない、咳もくしゃみも出てない、声もかすれていない、そしてとてもよく食べる。
風邪などひいてない。
何にもしないで一日中ソファーに横になっている、よって内蔵の動きも良くない、安定しないので腰も痛く足に力が入らない、当たり前の事だが母はこれを風邪だと言っている。
何にも出来ないので今何時か気にする意味が分からない。
父は去年の六月に亡くなっているので、もうこの世にいない、これを未だに覚えてくれない。
「醤油と味の素を冷蔵庫に入れないで」これを何千回何万回伝えても、お昼におやつを持って行った時に冷蔵庫を確認すると、当たり前のように二つ並んで入っている。
母は冷蔵庫を魔法の箱と思っているのだと思うが、介護のプロに聞くと、よくあることらしい。
とにかく総てが逆なのである「分からないんだから仕方がない」これに尽きるのだが、理解しようとするこちらがおかしくなる。
「しかしその行動総てには、必ず母なりの理由がある」私はそう思う。
冬が終わり少し暖かくなったら、また一キロ先のホームセンターまで母と歩いて行こうと思う。
母は私が誘うと、とても喜んでいる、顔が明るくなる、たまには外へ連れ出さないといけない。
思考が元々明るい人ではないので、独りでいると自分を責めておかしくなるのである。
母の心は多分こうである「まだ大丈夫、出来るだけ息子夫婦のお荷物になりたくない」だから我々が大変なのである。
私は子供の頃、素行が悪く、喧嘩っ早く悪い事ばかりしていた、母は隣近所や学校や警察に何度頭を下げてくれたか…
今はその罪滅ぼしをしていると言っていい。