生のヴァイオリンの音。
少し前、最寄りの駅前広場に一人でヴァイオリンを弾いてる方がいた。
失礼とは思ったが、私は前で聞いたり横や後ろでも聞いてみた。
広場なので天井や壁はない。総ては開放されている。後ろに大きなマンションが建っている。
ヴァイオリンのホディーで増幅された、こもった様な帯域のみが後ろのマンションで、わずかにエコーがかかった。そしてその音は上に昇り消えて行った。
これは奏法にもよるのだろうが、ヴァイオリンの音と言うのは、柔らかく滑らかでオーディオで聞いてるような、ヒーヒーヒャーヒャーとはならないものだ。
全く尖った音やうるささはないのである。しかし芯のある強い音だ。
レコードはマイクで録る。多分、生の様に録っても、レコードとして聞いた時につまらないのだろう。
かなり誇張して録音されている。私は思った。生の様に録音されていない。それが生の様に鳴るとオーディオでは少しおかしな事になる。やはり録られた音は録られたままにが一番。
他のレコードを聞いた時、生のヴァイオリンの音のバランスで鳴ったとしたら、多分ジャズや交響曲はおかしな帯域バランスに聞こえるだろう。
そう、生のヴァイオリンの音は、少しくぐもっているのだ。
オーディオとは、突き詰める程に誠に厄介なものである。
しかし、私は何とかほぼ総てのレコードが上手く鳴る帯域バランスを何とかみつけたと思う。
さてここまで読んでみなさんは、ならどうすれば良いの?だから何なの?と聞きたいのだろう。
残念ながらその答えはどこにもないのである。だれでも、どんな装置でも上手くいく方法があるのなら、私がとうに書いている筈である。
私と貴方とは、使っている装置が違うし、良い帯域バランスにするには、エネルギーロスを正攻法で出来うる限り減らし、その上で、帯域バランスを整えていく。それしかやりようがないからである。
ユニットがアバウトに繋がっており、その重なり合うところも問題となる。単なるdBや周波数の問題だけではないのである。
生のヴァイオリンの音は、そんな事を私に語りかけて来たようだ。
良い勉強が出来た。私は感謝を込めて、空き缶に千円を入れて帰路についた。
ありがとう、見知らぬヴァイオリン屋さん。