総てが馴染んだDL-103
ヘッドシェルを交換して時間が経った。シェルとカートリッヂ本体のダンパー、シェルリード線も馴染んだ様である。私は一日に八時間は仕事をしながらレコードを聞いている。なので一般の方よりは馴染みも早いと思う。
何でもそうだが新しいものを追加した時、なかなかしっくり来ないものである。カートリッヂは、留めたネジの具合やリード線の電気的な馴染みやダンパーもあり、なかなか本来の性能は発揮されないものである。
なので、季節による気温差もあるとは思うが、大体100時間使うとシックリ来て、本来の性能を発揮するようである。
私は二年程前にDL-103をあえて新品で購入した。ネットオークション等の中古も安くて魅力はあるが、何となく一から使ってみたかった。個人的にDL-103に敬意を表したいからである。
では何故今のこの時代にDL-103なのかであるが。若い頃、安易に安いので使っていた。しかし、年を経てふと思った。
ちょっと待てよと…若い頃は安いから?使っていたとは言え、思い起こしてみると確かに音は良かった。
自分は大変な間違いをしていたかも知れないと思った。若い頃のように安易に使うのではなく、あれから更に色々経験を積んだ今ならば、もっと上手く使いこなせるのではないかと思ったのである。
ウエスタンスピリッツが若い頃から購入して使ってきたカートリッヂの数は、ゆうに百を軽く越える、そして大まかには安価なものも超高級品も雛形は大きく変わる事はなく、音質に大して差はなかった。
そして、本当はもっと優れたカートリッヂだったのではないか、ただ自分が若いが故に「今よりは、いい加減に使っていたのかもしれない」そう考えた。
それと、DL-103は丸針とは言え、それまで使った方の癖みたいなものがあり、中古では正当な判断が出来ないと思ったからである。
それとカートリッヂは、使用頻度に関係なく、ダンパーがだいたい十年で劣化すると思えた。中古とは見た目はきれいでも、そんなものだろう。
そしてその思いが裏切られる事は今回もなかった。MCカートリッヂの中では安価なカートリッヂである、現在、値段は35000円と値上がりしてしまったが、新品で購入されたし。
丸針なのでコンプライアンス(トレース能力)は多少低いとは思うが、トーンアームの調整が出来ていれば、そこは殆ど気にならない。レコードレーベルの差をあまり感じないで、ステレオもモノラルも安心して何でもそこそこに聞ける。
DL-103は、NHK(日本放送協会)と共同開発された一つ一つハンドメイドで作られたプロ用である。ならば上手く鳴らせないのは、こちらの力量不足とウエスタンスピリッツは思った。
二週間鳴らしてきて、音の角がとれ、情報量が増えて来たのを強く感じる。
そして、若干音量が大きくなった様である。よく考えてみてほしい、カートリッヂは発電機である。少しの差がとても大きく音質を左右する。これからもっと正確な針圧計を探して購入し、更にベストな針圧を探る事にする。
それにしても、ステレオもモノラル盤も、何でも再生出来るカートリッヂは、精神的に良いものである。
有名なオーディオ評論家も、必ず一つは所有してると聞く。DENON DL-103は永遠のスタンダードだと思う。そして、総てが一つ一つ手作り(ハンドメイド)である。
素晴らしい、日本が世界に誇るカートリッヂである。
フレッシュで太く、しっかりした音が特徴のカートリッヂである。みなさん、あえて今から新品で購入し、DENON DL-103を使おう。
そして安いからではない、上手く鳴らないのは貴方の調整能力が低いからである。素人が、厳しい修行の結果手にしたプロが使う本物の包丁を購入しても、絶対に使いこなせない、それと同じである。
DL-103は、正に銘刀である。