オーディオを上手く鳴らす基本
永年オーディオに携わってきて、ウエスタンスピリッツは、強く主観でこう思う。
電気的な要素や、ケーブルや接点を減らすなど、音を良くする方法は他にいくらでもある。
しかし肝心である機材を設置するラックや、アナログプレーヤーのキャビネット、スピーカーやラックの下のインシュレーターの素材、これがしっかりしていないと何をやっても間違えた結果しか出てこない。
まともに設置されてない機材が、まともに動作するなど考えられない。でも何も高級なラックに据える事ではない。
高級な物を使えば音が良くなるならば、オーディオに苦労はない。お金がなければないなりに良い音は鳴らせる、そう言いたいのである。しかし、やはりオーディオは何を選ぶかセンスが必要になる。
今日はそのお話をしよう。
以前は、重く圧倒的な質量があれば良いと思っていた。その中で、比較的安易に質量を簡単に得られるのがコンクリートである。
しかし、コンクリートで作ったアナログプレーヤーの下の台と、スピーカーの下に設置したコンクリートブロックは、音が固く冷たく人工的で品がなく、美しい響きが死んでしまう事に気が付いた。
昔、コーラルと言うメーカーがあり、オーディオ用のウッドブロックを製造販売していた。購入してスピーカーの下に敷いてみると、実に開放的で爽やかな鳴り方になった。音が下に抜ける感じだった。
しかし、アナログプレーヤーの下の台にはあまり向かなかった。コーラルは、スピーカーのインシュレーターと明記して販売していた。それは勝手に行ったこちらの責任である。
そしていつの間にかインシュレーターの事は忘れていた。しかし、結婚して自由になったので木材を方々探し歩いた結果。
東急ハンズ渋谷店の木材売場に辿り着いた。木材には実に凄い数の種類があることに、初めて気が付いたのである。ウエスタンスピリッツは、その殆どを購入して聴き比べた。
一般的に日本で高級オーディオに使用されてる代表的な木材は、桜と楓である。そして、その頃、ウエスタンエレクトリックの巨大なシステムを納める鉄のアングルを見た。
金属の中で、鉄は確かに内部損失も適度にあり、音質に優れている。しかし音が分離せず団子になり、ガッチリしているが、音に伸びやかさや艷がない。それが、ウエスタンサウンドを、更にナローレンジにしてる気もした。
鬼の様に色々木材で試していると、黒檀に耳が釘付けになった。特に個人的に黒檀の中でも、アフリカ黒檀でなく青黒檀である。しかし、どの素材も初めから固くひび割れていて、加工がかなり困難なのがこの木材の欠点の一つである。
それをウエスタンスピリッツは加工して、アナログプレーヤーの下や、ホーンやドライバーのインシュレーターに使用したりしている。音は芯があり、クリアーで濃厚そのものである。
しかし青黒檀は、総てに完璧ではない。なぜなら、いかなる優れた木材にも固有の響きが存在するからである。使いすぎるとその音質が強く全体を支配していまう。
色々な木材を合わせて重ねたりして使い、ウエスタンスピリッツは今の音を作ってきた。木材の種類の組み合わせは無限大にあり、時おり分からなくなって来るが、優れた響きは個々に違い、なかなか楽しいものである。
市販のラックをご購入するのも良いが、やはり個々に製作される事をお薦めする。
ウエスタンスピリッツの様に、ターンテーブルのキャビネット迄作ってしまうのは、些か過激だが。システムラックを作るのは、根性はいるが、比較的難易度は低いと思う。
板の厚さ、総重量、板の種類、響きがドンピシャはまった時、かなりの音質効果を期待出来る。
総ては合わせ方と、作り方である。木材で響きを作るとは言っても、あまりに軽すぎたり、また重すぎても床に負担をかける事になり、宜しくないと思う。
そして、選ばれる木材の質が、反りなどに強い事も考慮しなければならない。後に湿気等で反ったり割れたりしては、折角の努力が無駄になってしまう。これだけは最低限避けたい。
黒檀、青黒檀、チーク、桜、楓、ブビンガ、パオロッサ、スネークウッド、紫檀、赤木、シャム柿等色々種類はまだまだある。
そしてインシュレーターは、使う木の種類もあるが、その大きさも量も形もある。ただ合わせるとき、木ネジや金属や接着剤が間に介在すると、その音がつくので要注意である。
ウエスタンスピリッツが行った実験では、上に載る機材が重い場合に於いて、ただ重ねるだけが、素材の響きがでて一番音質が良かった。
木材の質量は、確かにそこそこにあった方が良いとは思うが、多すぎるとその木材の音に支配されやすい。
そこは個人で検証されたし、貴方の腕の見せどころである。様々な木材の種類は、オーディオを上手く鳴らすキーワードの一つである。
オーディオは電気的な事ばかり見ていては上手く鳴らない。木材選び…これも地獄の一丁目かな?
製品として購入するより安く良いものが作れる。あまった予算でソフトをたくさん購入しよう。