総てをオフにした部屋
オーディオシステムの電源を総て切り、換気しておいた部屋の窓を閉め、少しの間リスニングポイントに座ります。
リスニングルームは、250ヘルツマイナス30デシベルの簡単な防音になっています。
部屋はシンッと静まりかえっています、しかし当たり前ですが、外にいるような開放的な音ではなく、耳に蓋をされたようなこもった静けさがあります。
本当にリスニングルームのゼロの音が分かる時です、これをオーディオの電源総てをオンにした状態で再現するのが私の目標です。
しかしいくら音は外気から遮断されてるとは言え、様々な高周波(デジタルノイズ)を感じる。
私は歳をとりもうじき還暦を迎えますので、もう若い頃のように耳がいいとは言えません。
この際、高周波ノイズは省きますが、朝オーディオシステム総ての電源を入れます、すると極僅かではあるが、ノイズが出ている。
特にウーハーに耳をあてる位の距離まで近づかないと分からないですが、優秀なイシノラボのマルチシステムでも、リスニングポイントでは聴こえないですが、ノイズが僅かに聴こえます。
過去ノイズカットトランスを、オーディオシステムの機材総てに一対一で繋いでいました。
その数全部で10台でした、トランス屋さんに伺ったところ、総てのノイズカットトランスの設置距離は、2.5メートルとの事でした。
しかし約16畳の部屋では些か無理があったので、トランスそれぞれの距離と向かい合わせる方向等、試聴する音量迄ボリュームを上げて、一番ノイズの少ない位置を探しました。
しかし数ヶ月聴いてると、上手く鳴るソフトと鳴らないソフトが増え、結局以前に比べ聴いててつまらなくなり家内に聞いてみました。
「ずっと黙ってあなたの音を聴いて来ました、あなたがノイズカットトランスを増やすたび、音の鮮度がガックリ落ちたと思う、一度全部ノイズカットトランスを外して、この際、配線ももっと綺麗にしてみたら?」との事でした。
真夏の暑い日、早速汗だくになりながら、一日かけてノイズカットトランスを全部外し、配線も総て短くして、考えられる限り考えながら綺麗に配線しました。
そして総てのノイズカットトランス10台が外れた音は、いい意味で軽やかで、実にチャーミングな鳴り方になりました、聴いたのはズービンメータがイスラエルフィルを指揮したクルミ割り人形でした。
日本盤のレコードですが、今まではボリュームを絞ると痩せて、ボリュームを上げるとうるかったのです。
確かにメータなので派手なのですが、ノイズカットトランスを繋いでいた時には聴こえていなかった様々な細やかな音や、総ての音が霧が晴れたように二本のスピーカーを無視したかのように、空間から吹き出すように鳴ったのです。
開放的で爽やかな鳴り方でした、その夜家内と晩酌しながら聴きました、家内は一言「これはあなたの仕事だから、どう感じたか分からないけど、私はこの鳴り方が好きだ」と言いました、私も同感でした。
それでもノイズカットトランスを薦めた方は、ノイズカットトランスを繋いだ方が、鮮度は落ちても私は好きだと仰いました。
そして再びノイズカットトランスを繋ぎ、しばらく聴いて、一台ずつ日を置いて外して行きました。
外す毎に音は軽やかになり、情報量が増えていきます、そして思いました(ノイズカットトランスは我が家では必要ない)そう思います。
もう一つ、私はノイズカットするためにノイズカットトランスを入れた訳ではありません、入れた時はトランスを繋いだ音にしたかったからです。
しかしキャパの小さなトランスでは、音がよくならず、大きなキャパのトランスでないと、息が切れたような音になり、大きな容量のトランスにしていったのです。
結果、確かにある意味狙ったところは改善されました、しかし私はそこにはまってしまっていたのです。
結果ノイズカットトランスどうしの距離がつまり、ノイズカットするはずのトランスどうしが干渉し、機材のトランスにも影響し、著しくシステム全体の音の鮮度が落ちたのだと思います。
それから私はノイズに敏感になりました、余計なものは出来る限りシステムから外し、アース(グランド)周りをシンプルかつしっかりさせて来たのです。
更に二本のスピーカーのセッティングの大切さを知りましたが、私はそのセンスにあまり長けているとは思えません。
しかしゼロの音を構築するのに、そのセッティング技術は、とても大切なのも理解しています。
オーディオシステムからノイズが聴こえてはいけません、鳴らしてないときの無音が基本だと思います。
しかしこの様な事も広いオーディオの中のほんの一部にすぎません。
オーディオは実に難解で深いのです。