これを購入したら低音出るようになりますか?
昔、秋葉原でオーディオ販売員だった頃、高級機を購入されるお客様から一番多かったご質問です。
正確には、引き締まった低音になりますか?です、これには正直困ります、オーディオは環境によって全く違う結果になるからです。
出力の大きなパワーアンプは駆動力が高く、圧倒的な強靭な音になる、皆さんそう思っていると思いますが、必ずしもそうではないのです。
私はこう答えていました「失礼ですがお客様、私はお客様の部屋もシステムを見たことも、聴いた事もありません」と。
すると「それを教えてくれるのがあなた方販売員ではないのか?」確かにそうなのだが。
そしてこう答えていた「一度お互いのスケジュールをあわせ、聴かせていただきたいのですが」
そして実際伺い聴いてみる、しかし、音が及第点に達しているリスニングルームは一件もなかった。
伺うと奥様(財務省)もいらっしゃる、女性はクラシックコンサートや、ジャズのライヴが好きである。
主人は一生懸命働いてくれてるので、好きな趣味をけなしたくないが、オーディオは、大きな音で、好きでもない曲を無理やり聴かされるし、うるさくて聴いてるのが苦痛になる、何とかなりませんか。
ご主人と奥様との板挟みになってしまう、なので「お店ではなかなか家庭とはほど遠い条件になるので、一度私のリスニングルームへお越しになってはいかがでしょうか?大した音ではないですが、ご参考になればいいのですが」
本来、仕事を離れての事になるので、あまり宜しくはないのですが、お客様はそのような経験がないので、お洒落をしてお土産ご持参でお越しになる。
少しのお話の後、ご持参されたソフトを我がシステムで聴いていただく、ご夫婦でお口をあけびっくりして聴いていらっしゃる。
開口一番奥様が「これだよ!これ!コンサートやライヴはこんな感じだよ、あなた全然うるさくないじゃない」
旦那さんは「全く違うね、このような音が欲しい」と話します。
これがどれほど難しい事なのか全く理解されていない、結局、そこからオーディオのお付き合いが始まる。
話をお伝えするのもとても難しい、ましてや音の事である、お客様のプライドだってあるだろう。
私はそう思っていた、しかしこうするしかないのである、これらから分かる事、やはり標準の鳴り方や、帯域バランスは存在するのである。
オーディオは優れたものを使うだけではいい音にはならないのである。
低音を素敵に鳴らすには、全帯域が整い、機材の設置の仕方や、色々な条件が揃ってはじめて鳴るのであり、名機を使っただけで鳴るほど安易ではないのです。
本日の珈琲は、バリ神山(しんざん)ハニー、旨味、甘味がありとても美味しい。